大阪都構想、「住民投票否決」で菅首相の大打撃 維新は党勢失速、松井市長の政界引退が痛手に
こうした中、大阪都構想の住民投票が目前に迫った10月29日には、馬場伸幸維新幹事長が衆院の代表質問で都構想実現の意義を力説。菅首相も前向きな答弁で援護射撃する場面もあった。その一方、国・地方選挙で維新と激しく対立する自民党大阪府連は、大阪都構想への反発が根強く、菅首相との思惑の違いも際立っていた。
国政政党の維新にとっても「大阪都構想の実現は党勢拡大のカギ」(幹部)との位置づけだった。最初の挑戦となった2015年の住民投票で否決された際には、維新のリーダーで大阪市長だった橋下氏が政界引退を余儀なくされた。その結果、2017年衆院選では2014年衆院選で獲得した41議席を大きく減らす、11議席まで落ち込んだ。
松井氏の政界引退が痛手に
ただ、その後は党勢も回復し、次期衆院選では「30議席以上の獲得が確実」(選挙アナリスト)との分析もあった。ただこれは、「大阪都構想の可決が前提」(同)で、維新内部でも「今回の都構想否決と松井氏の引退表明による選挙戦への痛手は測り知れない」(幹部)との不安が広がる。
その一方で、衆院解散のタイミングを探る菅首相にとっても「都構想否決による維新の失速は大きな計算違い」(閣僚経験者)とみる向きが多い。自民党などが定期的に実施している全国情勢調査などでは、「次期衆院選は自民の議席減の可能性が高い」(自民選対)とされる。菅首相サイドは「自公が議席減となっても、維新を取り込めば十分補える」と自公維連立政権をちらつかせていた。だからこそ、9月の菅政権の組閣でも、橋下氏の総務相起用が取りざたされたのだ。
ただ、「自公維連立実現のキーパーソンは松井氏」(自民幹部)とされていただけに、橋下氏に続く松井氏の政界引退は「菅首相にとって痛手」(同)となる。しかも、菅首相と緊密に連携する自民党の二階俊博幹事長は、かねて大阪都構想に否定的だった。このため、今回の事態を踏まえ、「菅政権内では維新と距離を置く二階氏の影響力が一段と増す」(自民長老)との見方も広がる。
一方、大阪自民とともに都構想否決に成功した立憲民主や共産など主要野党は、「これで次期衆院選で維新の全国展開に歯止めがかかる」(立憲民主選対)と読み、全国的な野党統一候補の調整に全力を挙げる構えだ。
菅首相は周囲に「国政への影響はない」と平静を装うが、自民党内では「学術会議問題で支持率が急落している中、新たな痛手になるのは間違いない」(若手)との声が多い。
11月2日に始まった衆院予算委では、野党側が学術会議問題での菅首相の強権的姿勢を厳しく追及し、菅首相は防戦を強いられている。それだけに与党内では「今回の維新の挫折は、菅1強が弱まるきっかけになるのでは」(公明幹部)との見方も出始めている。
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