大阪都構想、「住民投票否決」で菅首相の大打撃 維新は党勢失速、松井市長の政界引退が痛手に
大阪都構想は橋下氏が提唱し、同氏が松井氏とともに立ち上げた地域政党・大阪維新の会の看板政策だった。大阪府と大阪市の二重行政をなくすことで大阪全体の発展につなげるとの発想だった。
過去の大阪では府知事と市長が対立し、行政の無駄が際立っていた。松井氏らは「大阪の不幸せ(府市あわせ)解消」として改革を目指した。
住民投票の開票結果を受けて1日夜に記者会見した松井氏は、「2度目の敗北は、すべて私の力不足が原因。政治家としてのけじめをつけなければならない」と市長任期満了時の政界引退を表明。吉村氏は「僕が都構想に挑戦することはない。(政治家としての進退は)任期満了の前に判断したい」と、悔し涙をにじませて敗北を認めた。
憲法改正で安倍前首相と連携
松井、吉村両氏の後見人でもある橋下氏は1日夜、今後の維新について「吉村氏が担うのでは」と述べ、世代交代の必要性を強調した。ただ、大阪の地域政党から中央政界へと勢力を拡大した維新は、今回の大阪都構想否決で党運営のトップリーダーと看板政策を同時に失うことになる。今後は国政政党としての存在感も低下する可能性が大きい。
橋下氏が府知事時代の2010年4月に大阪維新の会を旗揚げした際、当時首相退陣後の無役に甘んじていた安倍氏を党首に迎えようと打診したことが、両氏の親密な交流のきっかけとされる。これと並行して、橋下氏とタッグを組む松井氏も地方議員時代に菅首相と意気投合し、党派を超えた盟友として連携を強めてきた。
第2次安倍政権が発足した2012年暮れ以降、安倍、菅両氏と橋下、松井両氏は年末などに定期的に4者会談を続け、安倍1強時代の自公政権の補完勢力として維新は存在感を示してきた。維新の国会議員も「我々は与(よ)党でも野(や)党でもない『ゆ』党」と自任してきた。
大阪の地域政党として出発した維新は、大阪都構想を軸に「統治機構の抜本改革」(橋下氏)を政治目標に掲げ、その延長線上で憲法改正を主張。その実現を悲願とする安倍前首相と連携を深めた。自民党にとっても参院での改憲勢力3分の2を確保するためには維新の協力が必要で、それを背景に自民、維新両党は「国会運営での持ちつ持たれつの関係」(自民幹部)を維持してきた。
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