マセラティの企業規模を少量生産から中規模生産メーカーへシフトさせるというグループ内の戦略からフェラーリ傘下を離れ、FCAのマネージメントへと戻ったのだが、その背景には1人の男の存在があった。
そう、それは故セルジオ・マルキオンネFCA CEOだ。マセラティにはFCAグループにおけるフラッグシップ・ブランドとして、それまでの年間数千台を一気に10万台近くまで持ち上げるという大胆な計画が託されたのだった。
しかし2018年、そのすべてをコントロールしていたマルキオンネの突然の死去によって、状況は大きく変わった。
アルファロメオとの開発における協業体制、初のSUV「レヴァンテ」のリリースなどが行われたものの、マセラティブランドの核となるスポーツカーの開発が止まってしまったのだ。そして、そのアグレッシブな拡大政策は方向転換を強いられる状況となった。
そこで、急遽体制の見直しが行われた。故マルキオンネの下でFCAの技術開発におけるリーダーシップを取ったハラルド・ウェスターが、エグゼクティブチェアーマン、マーケティングのエキスパートであるダヴィデ・グラッソがCEOに任命される新しい布陣となったのが、昨年のことであった。
そして、マセラティこそがモデナをベースとするスポーツカーブランドであるという、DNAの再認識が行われた。ブランドの本質を追究するために、いたずらな生産規模の拡大路線に終止符が打たれたわけだ。
プライドを懸けた挑戦
分散していたマネージメント拠点をモデナに統一し、開発拠点もモデナのマセラティ・イノベーション・ラボへ集約、モデナ工場のリニューアルへの大号令がかかった。マセラティとして独立したスタンスを持ったマネージメント体制の確立が、急ピッチで進んでいる。
その新体制下における新生マセラティブランドのアイコンとなるべく選ばれたのが、ミッドマウントエンジンスポーツカーのMC20プロジェクトであった。
現行「グラントゥーリズモ」「グランカブリオ」の後継モデルではなく、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなど、強敵が君臨するスーパースポーツカーのセグメントへ向けたニューモデル投入は、モデナの伝統スポーツカーメーカーとしてのプライドを懸けた挑戦なのだ。
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