マセラティがフェラーリとの決別で見せた本気 電動化を見据えた「MC20」が示す未来への挑戦

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モデナにおける先月の取材時に見たMC20のシャーシが、BEVを前提に作り込まれていることを筆者は確認済みだ。フロントのサブフレームにもモーター設置用ブラケットが用意されているし、キャビン後ろにバッテリーを搭載するスペースが確保されている。

縦置きエンジン後方に設けられたトランクルームもまた、バッテリー搭載を前提にデザインされているという。マセラティがV6エンジンをセレクトしたのは、環境への対応だけではなく、BEVレイアウトとの互換性も考えられてのことであろう。

電動化を見据えて作られた「MC20」のパッケージング(写真:マセラティ)

つまりマセラティは、このセグメントとして早いタイミングでBEV仕様をデビューさせることで、MC20の存在感をさらに高める戦略を考えているのだ。ちなみに、MC20のプロトタイプがモデナを疾走していたが、音量は控え目ながらも、とても官能的なサウンドを聞かせてくれた。マセラティ伝統の“深みのあるエグゾーストノート”もこのMC20のこだわりだと、チーフエンジニアは語っている。

同時にBEV仕様においてもドライバーを高揚させるマセラティらしいサウンド作りを追求すべく、マセラティ・イノベーション・ラボの専門セクションが日々、その開発に勤しんでいるという。トップエンドモデルでマセラティのEVテクノロジーをアピールすべく、まずは内燃機関版ミッドマウントエンジンレイアウトモデルを投入したわけだ。

さらに次のマセラティはBEVのみでデビュー

MC20は、マセラティブランドとしての未来を世の中に示すマニフェストそのものである、というのが結論である。

ダヴィデ・グラッソCEOと「MC20」(写真:マセラティ)

マセラティは、このMC20に続いて開発が進んでいる、主力モデルの次期グラントゥーリズモ系(4座2ドアクーペ/オープンモデル)はBEV仕様のみでお披露目を行うとアナウンスしている。つまり完全にBEVメインなわけだ。

100年の歴史を持つ“エンジン屋”マセラティは、“電動機屋”というもう1つの表札を付けるべく、電動スポーツカーの未来へも挑戦しようとしている。その決意表明たるエポックメイキングなモデルが、このMC20なのだ。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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