航空機並み速度のリニア走らせるテスラの思惑 「ハイパーループ構想」のインパクト

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テスラは電気自動車を販売している会社。テスラに対しこのようなイメージを持つ人が多いと思いますが、正確ではありません。電気自動車はあくまで手段であり、テスラ代表であるマスク氏が掲げているミッションは、エネルギー問題、大気汚染の解決や地球温暖化の防止など、環境問題の解決だからです。電気自動車が世の中のトレンドだからわが社も売り出そう。ビジネスの観点で電気自動車を販売しているほかの自動車メーカーとは、そもそも根本の考えが違っているのです。

実際、ビジョンの実現に向けてほかの事業も進めています。最近注目しているのは「Powerwall(パワーウォール)」事業です。同事業は日本でも2020年から始まりますが、ソーラーパネルの設置ならびに充電などのサービスを、サブスクリプションで行うものです。初期費用は無料で、月額5000円。毎月平均して6000円ほどの電気が発電されるとのことで、利用者は1000円得するというものです。当然、発電した電気をテスラの車両に充電することで、先のエネルギー問題の解決を成し遂げたい。そのような考えがあっての事業です。

渋滞中に発生する二酸化炭素やエネルギーロスに対する取り組みも始まっています。これはかなりユニークと言いますか、マスク氏ならではのアイデアですが、渋滞を解消するために、地下にトンネルを掘ってしまおうというものです。

彼が暮らすロサンゼルスはとくに渋滞が激しいエリアであることも影響しているのでしょう。すでに計画は進んでおり、ロサンゼルスと別の地点を結ぶトンネルがほぼ完成。トンネル内は自動車が通行できるよう整備され、ドライバーはエレベーターのような装置で地上から地下に降り、あとはとくに何もすることなく、自動運転で目的地までスーッと移動できます。

このトンネルのおかげで、これまで1時間かかっていたのが10分ほどで行けるようになるそうですから、エネルギーロスはかなり削減されます。同事業はボーリングカンパニーといい、テスラの車両が実際にトンネル内を通行する様子がユーチューブでも見られますので、ご興味がある方はご覧ください。

なぜ次々イノベーションを起こせるのか?

テスラの強みは、トップのマスク氏に尽きます。彼はサイエンスやテクノロジーに詳しいため、どのような属性のエンジニアを採用すれば事業が実現するのかを、正しく理解しています。

実際、彼の下にはNASAなど国の機関で働いていた超優秀な人材が、続々と入社しています。そして実力やガッツがある者には、年齢関係なくそれなりのポジションを与える。実際、テスラの現CFO(最高財務責任者)は35歳の若さです。

ソフトバンクグループの孫正義氏のように、トップダウンでビジネスが進むのも、テスラの特徴です。テスラはもともと、マスク氏が設立した会社ではありません。「PayPal(ペイパル)」という金融サービスで得た利益ならびに、彼の経営手腕が注目され頼まれたのがきっかけです。

ハードウェアビジネスは、計画・製造から実際に製品が売れ、キャッシュが入ってくるまでかなりの時間を要します。そのため資金が乏しくなりがちです。実際、彼がPayPalで得た100億円も次第に枯渇していきました。

そこで工場の自動化ならびに、当時1000万円ほどの価格だった車種に、500万円のモデルを加えることを計画。キャッシュを稼ぐ戦略を行います。ところが工場の自動化がうまくいきませんでした。しかし彼は諦めず工場に泊まり込み、寝る間も惜しんで何とか人力で新しいモデルを作り上げたのです。こうして完成したモデル3をきっかけに、テスラは急成長していきます。

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