一流企業から脱サラ→失敗した50代男性の末路 用意周到で緻密だった彼に足りなかったもの

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この調子で少しずつ顧客開拓も続けて5社まで増やし、単発の仕事も上乗せできれば、サラリーマン時代の年収と同レベルを稼げる──。サラリーマン時代と異なり、自己裁量で必要経費を落とせるため、可処分所得はむしろ増えそうだとも思えてきました。

順調な船出から半年ほど経ったある日。訪問していた顧問先企業で経営者から明らかに契約した業務内容を超える相談があったのです。これまでも訪問時間は1回2時間と定めているのに、大幅に超過することも多く、窓口担当者と話していたことをひっくり返されることもしばしばでした。

追加報酬を打診した途端…

この相談で発生する資料作成や各種手続きまでも安請け合いしてしまうと、算盤が合わないと思い、やんわりと追加報酬を打診することにしました。

「社長、お考えは重々わかりました。経営課題として取り組まなければいけないというのもおっしゃるとおりです。ただ、顧問の私としては、そこまでのお仕事をお受けする契約にはなっていないため、別途費用をお見積もりさせてもらってよいでしょうか」

その瞬間、社長の顔色が一変。

「えっ! 追加の費用がかかるのですか。ただでさえ、細かな契約書にもうんざりしていたのに。そもそもいつも先生がおっしゃることは正論ですが、正論だけで経営なんてできないんですよ。顧問として販路開拓にはほとんど貢献してもらえていませんし。いらっしゃった大手金融機関の人脈に期待していたのですがね。紹介いただいた方の義理もあるから我慢していましたが、わかりました。顧問契約は来月までで終了とさせてください」

驚いたBさんは、慌ててなんとかその場は収めたものの、来月以降の顧問契約は続けられそうにありませんでした。帰り際に売り上げが半減することを冷静にシミュレーションして、真っ青になってしまいました。

「仕方ない。相応の報酬ももらえないし、あんな無茶な社長と付き合っていたら身が持たない。気を取り直して、次の顧問先開拓を頑張ろう」

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