パンダと麒麟で「GoTo」に照準、JR西の特急戦略 関西の在来線、「異色」のラッピングで勝負

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現場からも「福知山駅では乗客からお城へ行き方の問い合わせがたくさん来ている」(谷口博之駅長)と、“光秀効果”を指摘する声がある。大河ドラマは織田信長が上洛し、光秀がいよいよ歴史の表舞台に躍り出る展開に。北近畿地区での乗務経験がある同社東京広報室の川畑有希恵さんは「289系も光秀と同じように、かつては美濃や越前を駆けた車両。丹波地方での活躍に縁を感じる」と話す。

福知山城など沿線の光秀ゆかりの地を側面にデザインした(記者撮影)
新大阪駅に到着する光秀ラッピングの「こうのとり」。金屏風をイメージした車体色が目を引く(記者撮影)

福知山城公園内の美術館に設けた「福知山光秀ミュージアム」は歴史学者・小和田哲男さんの監修。戦国武将ゆかりの資料や光秀の生涯を解説するパネルなどを期間限定で展示中だ。JR西日本も「知られざる善政の名君 明智光秀」をテーマに福知山市のほか、「本能寺の変」へ出陣した亀岡市、居城の坂本城があった滋賀県大津市を舞台にした特別企画を開催する。

福知山市の大橋一夫市長は、特別企画の開始にあたって「光秀公は福知山市にとっては善政をしいた名君であり、市民に親しまれている存在。『麒麟がくる』が始まるまでは強かった反逆者、謀反人のイメージを払拭し、新しい光秀像を全国に知ってもらいたい」と力を込めた。

回復鈍い在来線特急

JR西日本の最近の利用状況をみると、在来線は「近畿圏」の近距離券発売枚数が8月は前年比59%、9月(速報値)は69%、10月(1~14日、同)は79%と持ち直し傾向にある。一方、特急は8月が25%、9月が36%、10月が41%と、通勤・通学需要などに比べ動きが鈍い。

パンダくろしおの3編成目がデビューした7月後半の4連休は、ちょうど新型コロナウイルス感染拡大の第2波への警戒感が高まった時期だった。その後、関西でも京阪神の「近場」の観光地にはにぎわいが戻ってきているものの、マイカーやレンタカーでの移動が好まれているようだ。和歌山営業部の上段部長は「在来線は厳しい状況が続いているが、車内の感染予防対策をしっかりとしているので安心して乗車してほしい」と話す。

外国人旅行客の増加に伴って「観光公害」まで指摘されていた関西の観光地はコロナ禍で一時、人の姿がまばらとなった。海外に代わって国内旅行が再評価される中、10月からは東京発着の「GoToキャンペーン」が解禁。関西だけでなく、首都圏からの旅行需要取り込みも期待できる。地味な存在だった特急車両にとって、インパクトある見た目をきっかけに、沿線の魅力の再発見、さらに集客へとつながるのであれば、思い切って大変身した甲斐があったと言えそうだ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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