パンダと麒麟で「GoTo」に照準、JR西の特急戦略 関西の在来線、「異色」のラッピングで勝負

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JR西日本がくろしお・こうのとりなどで運用する車両には287系と289系がある。287系は大阪・京都と金沢・和倉温泉を結ぶサンダーバードの683系4000番台をベースにしており、車両同士が衝突した際に相手車両を外側へそらす「オフセット衝突対策」や衝撃吸収構造など安全性が考慮されている。

新大阪駅を出発する通常デザインの287系「くろしお」(記者撮影)
「こうのとり」用(赤い帯)と「くろしお」用を連結した289系(記者撮影)

289系は2015年3月の北陸新幹線金沢開業に伴い、名古屋と北陸方面を結ぶ「しらさぎ」の683系2000番台を直流化して転用した。287系・289系とも、くろしお用は「オーシャングリーン」、こうのとりなど北近畿方面用は「ダークレッド」と呼ぶ側面のラインカラーで区別される。運用の都合によっては両者を連結した「くろのとり」をみる機会もある。

289系は先頭車の形状が前後で異なる編成があり、非貫通タイプは流線型でいかにも格好がよい。が、ほかの編成と連結できる貫通側は平面的なデザインでビジネス路線の要素が強く感じられる。287系の前面に至っては289系のような前照灯部分の帯もなく、真っ白で何かが足りない印象がある。

そのイメージを一変させたのが、3年前に登場した「パンダくろしお」だ。京都と和歌山県の新宮の間を毎日運行している。

大きく描いた「パンダの顔」

パンダくろしおは2017年にJR西日本の発足30周年と、和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」の40周年を記念してデビューした。同園は現在、6頭のジャイアントパンダを飼育する世界有数の繁殖・研究機関でもある。

「パンダくろしお」1編成目の車内=2017年8月5日(記者撮影)

車両は287系6両編成を使用。目に見立てた前照灯の周りや鼻、耳にあたる部分を黒くして前面を巨大な「パンダの顔」に仕上げた。目つきが悪そうにも見えるが、そこがかえって愛嬌があると評判だ。側面はアドベンチャーワールドの動物たちをデザイン、車内にはパンダフェイスのヘッドカバーが並ぶ。

デザインはアドベンチャーワールドの運営会社アワーズが担当した。強烈なインパクトを与える大胆な外観にも「『京都市屋外広告物等に関する条例』について許可が必要なため、条例に合うデザインでありながら、コンセプトが伝わるデザインを制作して協議した」(JR西日本和歌山営業部)と“大人の事情”への配慮もうかがえる。

同年8月5日のデビュー当日は天王寺駅で出発式を開催。和歌山県の仁坂吉伸知事も出席し「子供心に帰ったようでわくわくする」とパンダ列車に期待を示した。1番列車の車内は記念品の配布や写真撮影のサービスで盛り上がり、到着した白浜駅では地元の観光関係者がフラダンスなどで乗客を出迎えた。

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