10年ノマド夫婦がたどり着いた「職遊融合」の場 今でこそワーケーションが叫ばれているが…

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
広大な敷地にはキャンプサイトもある。しかもWi-Fi環境が整っているため快適な“お外”で仕事ができるのだ(写真:「OCEANS」編集部)

「オフグリッドはバンライフでの課題でもあって、エネルギー事情を含めて自立できるようにしたい。同じようにLAC八ヶ岳北杜もできるだけ社会的なインフラから解放された環境にしていきたいですね。衣食住、水や光熱などエネルギー含め、自分たちで暮らしを作れるようにしたいと思っています」

ジョニーさんのバンの屋根にはソーラーパネルが。エネルギーを自給しながらバンライフを送ってきた。同様にLAC八ヶ岳北杜でも2年を目安にエネルギー自給を目指す(写真:「OCEANS」編集部)

この点、はる奈さんは興味深い視点を教えてくれた。

「オフグリッド環境のいいところは、平時はインフラを利用しながらも有事の際には自立できる自分になれるといった、ある種の柔軟さを育めることにもあります。LAC八ヶ岳はそのためのショールームのような役割も担えたらと思っています」

はる奈さんは長く会社員として、企業の危機管理や防災に関するコンサルタントを仕事にしてきた。やがて「企業も防災も人次第。人の意識を変えることは大切」と思って独立。今はフリーランスとして企業案件を受けつつも、個人に対して「有事のときに対応できる力」を高める仕組みを作りたいと模索している。

北杜市でも過去には台風による山腹崩壊などの自然災害があった。LAC八ヶ岳北杜では、有事のときでもシャワーが使えるなど、できるだけ困らない施設を目指す(写真:「OCEANS」編集部)

「その力はレジリエンスと言うんですが、ロンドンの大学で危機管理のマネジメントを学んだ際、教授たちは日本の防災システムについてベタ褒めしたんです。

ただシステムが優秀すぎるから個人のレジリエンスが弱い。ヨーロッパはその逆で、システムが弱いから個人の力を高める必要性が生じる。日本は自然災害が多い国。多くの人がレジリエンスを高められるサポートをしていきたいんです」

オフグリッド化されれば、施設は災害時にシェルターとなる(写真:「OCEANS」編集部)

防災と日常は結び付きづらい。そこをジョニーさん夫妻は結び付けようとしている。

例えば、有事に役立つポータブル電源をはじめ、オフグリッドでも使える最新で見た目もいいプロダクトやテクノロジーを普段から備え、軽やかに。

クリエイターが集まる、世界が注目する場所へ

そしてジョニーさんが最も注力していきたいのが“モノを作る場所としての環境づくり”だという。

「あんなモノを作りたいな」といったアイデアをカタチに変える場がここにはある。人が集えばアイデアは磨きやすい(写真:「OCEANS」編集部)

「アーティスト・イン・レジデンスのメイカーズ版、メイカーズ・イン・レジデンスを作りたいんです。

そのためにLAC八ヶ岳北杜を、CNCルーターをはじめとする先進的な設備を備えた住みながらモノを作れる場所とする。

そうすればデザインは自分で行い、工程はコンピューターに任せるという具合でモノ作りができて、グラフィックデザイナーで家具が作りたいといった人の夢もかなえられると思うんですよね」

撮影や配信に使えるスタジオも用意。フード撮影などのほか、ZOOMやYouTubeなどを使い、制作した映像コンテンツをここから発信できる。©Syuheiinoue(写真:「OCEANS」編集部)

もちろん生産されたプロダクツが流通する仕組みも構築予定だという。

まさにモノ作りしたい人にとってのパラダイスは、「未来は闇ばかり」と感じていたジョニーさんが思うLAC八ヶ岳北杜の未来像。

そこには明るい光が煌々と差し込んでいる。

この夏に仲間入りしたヤギのニーナちゃん。LAC八ヶ岳北杜のアイドルだ(写真:「OCEANS」編集部)
「リビングエニウェアコモンズ(LAC)」
あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所で、やりたいことをして暮らす生き方を実践するための“コミュニティー”。現在、会津磐梯、伊豆下田、岩手県の遠野など日本全国5カ所に展開する(詳しくはHPを参照)。いずれもWi-Fi環境や電源などを完備したワークスペースと、長期滞在を可能にしたレジデンススペースからなる複合施設だ。2020年中には計10カ所のオープンを目指している。

(取材・文/内田優子)

「OCEANS」編集部

メンズファッション&ライフスタイルの情報誌『OCEANS』は、 “37.5歳”をキーワードにした独自の切り口が支持を集め、2006年の創刊以来、多くの読者にご愛読いただいています。2017年1月にはデジタルメディアを大幅リニューアル。ファッションはもちろん、毎日の“オッサンライフ”をもっと楽しくするハウツー情報の配信だけでなく、「対話するWEBマガジン」をテーマに、スナップ、動画、イベントなども展開していきます。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事