10年ノマド夫婦がたどり着いた「職遊融合」の場 今でこそワーケーションが叫ばれているが…
「オフグリッドはバンライフでの課題でもあって、エネルギー事情を含めて自立できるようにしたい。同じようにLAC八ヶ岳北杜もできるだけ社会的なインフラから解放された環境にしていきたいですね。衣食住、水や光熱などエネルギー含め、自分たちで暮らしを作れるようにしたいと思っています」
この点、はる奈さんは興味深い視点を教えてくれた。
「オフグリッド環境のいいところは、平時はインフラを利用しながらも有事の際には自立できる自分になれるといった、ある種の柔軟さを育めることにもあります。LAC八ヶ岳はそのためのショールームのような役割も担えたらと思っています」
はる奈さんは長く会社員として、企業の危機管理や防災に関するコンサルタントを仕事にしてきた。やがて「企業も防災も人次第。人の意識を変えることは大切」と思って独立。今はフリーランスとして企業案件を受けつつも、個人に対して「有事のときに対応できる力」を高める仕組みを作りたいと模索している。
「その力はレジリエンスと言うんですが、ロンドンの大学で危機管理のマネジメントを学んだ際、教授たちは日本の防災システムについてベタ褒めしたんです。
ただシステムが優秀すぎるから個人のレジリエンスが弱い。ヨーロッパはその逆で、システムが弱いから個人の力を高める必要性が生じる。日本は自然災害が多い国。多くの人がレジリエンスを高められるサポートをしていきたいんです」
防災と日常は結び付きづらい。そこをジョニーさん夫妻は結び付けようとしている。
例えば、有事に役立つポータブル電源をはじめ、オフグリッドでも使える最新で見た目もいいプロダクトやテクノロジーを普段から備え、軽やかに。
クリエイターが集まる、世界が注目する場所へ
そしてジョニーさんが最も注力していきたいのが“モノを作る場所としての環境づくり”だという。
「アーティスト・イン・レジデンスのメイカーズ版、メイカーズ・イン・レジデンスを作りたいんです。
そのためにLAC八ヶ岳北杜を、CNCルーターをはじめとする先進的な設備を備えた住みながらモノを作れる場所とする。
そうすればデザインは自分で行い、工程はコンピューターに任せるという具合でモノ作りができて、グラフィックデザイナーで家具が作りたいといった人の夢もかなえられると思うんですよね」
もちろん生産されたプロダクツが流通する仕組みも構築予定だという。
まさにモノ作りしたい人にとってのパラダイスは、「未来は闇ばかり」と感じていたジョニーさんが思うLAC八ヶ岳北杜の未来像。
そこには明るい光が煌々と差し込んでいる。
あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所で、やりたいことをして暮らす生き方を実践するための“コミュニティー”。現在、会津磐梯、伊豆下田、岩手県の遠野など日本全国5カ所に展開する(詳しくはHPを参照)。いずれもWi-Fi環境や電源などを完備したワークスペースと、長期滞在を可能にしたレジデンススペースからなる複合施設だ。2020年中には計10カ所のオープンを目指している。
(取材・文/内田優子)
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