給油に6日!ガソリン足りない国の深刻な実態 ベネズエラ、石油埋蔵量世界一なのになぜ
それにしても、なぜここまで深刻なガソリン不足に陥っているのだろうか。
ウゴ・チャベス氏がクーデターを敢行して政権についたのは1999年2月のこと。原油の埋蔵量では世界一の国が反米主義を唱え社会主義国家を目指した。その間、1999年に1万2000社余りあった民間企業は2017年には3800社まで減少。チャベス氏は利潤を追求していく経営者の存在を否定し、一定以上の利益を上げることを禁止させた。これがボリバル社会主義革命の1つであった。この思想についていけない企業は廃業するか、大手は国営化された。
国営化された企業の収益力は徐々に低下していった。それでも原油が高値で輸出できていた頃は外貨を豊富に獲得できたため、国営企業のこうした問題はあまり重要視されなかった。何しろベネズエラのGDPの95%は原油の輸出に依存していたからである。
ところが、原油価格が下落し始めると、外貨の不足が目立つようになった。外貨の歳入が豊な時代は国内で不足している物資も外国から容易に輸入できた。ところが、外貨が不足し始めると輸入も思うようにはできなくなった。これが品不足を招き、インフレにつながった。
国民1人当たりGDPは半減
原油の採掘や製油についても、新しい設備への投資が長く実施されておらず、すべてが老朽化していったようだ。
原油価格の下落に加えて、アメリカによる経済制裁などもあり、2014年から景気が急悪化。1人あたりGDP(国内総生産)は2019年までに半減したとも言われている。徐々にましになっているとはいえ、今年7月のインフレ率は2358%ととてつもなく高い水準にある。
ベネズエラ大使館によると、チャベス氏が大統領に就任してから「極度の貧困」にある家庭は1998年の10.8%から2013年には5.5%に減ったとされているが、ロイター通信の報道によると、2019年には64.8%の世帯が「多次元貧困」(世帯収入だけでなく、教育へや公共サービスへのアクセスを含む)状態にある。
チャベス氏やマデュロ大統領の功罪や手腕、ベネズエラの現状をめぐる報道は数多くあるが、ベネズエラから発せられるものと欧米メディア中心の報道に違いがあるため、断定するのは難しい。しかし、複数の要因が景気悪化要因になっているのは間違いないだろう。
原油による輸出額も10年前は900億ドルあったのが、今年末には23億ドルまで減少が予測されている。わずかの採油しかしておらず、その輸出もアメリカの制裁によって市場が限定されている。また、製油所も設備が老朽化して使用できなくなっている。
さらに悪いことに、ベネズエラで採油をしている外国企業もアメリカからの圧力で撤退を余儀なくされている状態だ。スペイン最大の石油企業レプソルも近い将来ベネズエラから撤退する意向である。
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