「低品質なダム」で環境破壊続ける中国のヤバさ

メコン川全体の「漁獲量40~80%減少」の危険も

内陸国で発展の遅れたラオスは中国の支援を受けて大型のサイヤブリ・ダム、ドンサホン・ダムを建設し、さらに3基の大型ダムを建設中だ。

一方、この4カ国で構成し水資源を管理する組織「メコン川委員会」のメンバーでない中国は、自国の電力需要急増に伴い、独自にダム建設を進めてきた。

中国は目下、水源に近い雲南省に14基のダムを建設中で、すべて完成すれば総出力2万2260メガワットに上り、広東省などの電力不足を大幅に解消できる。

だが最初に完成した漫湾ダム(1500メガワット)は、1993年の稼働直後から土砂やシルト(細かい粒子の砂)が堆積し、わずか3年で貯水池の有効貯水量が大幅に減った。その後も、大朝山ダム(1350メガワット)、小湾ダム(4200メガワット)を竣工。タイとの合弁事業の景洪ダムも稼働を開始した。

メコン川の水位が過去100年で最低レベルに低下

例年なら雨期にメコン川からの水で満たされるのだが(2020年7月)(写真:PRAK CHAN THUL-REUTERS)

その影響で、メコン川下流域で昨夏、深刻な水不足が発生した。7月に中国が干ばつに備えて景洪ダムの放水量を半分に減らしたうえ、同じ時期にラオスのサイヤブリ・ダムも試運転を始めたため、メコン川の水位が過去100年で最低レベルまで低下したのだ。

下流域の稲作地帯が広範囲に干上がり、漁獲量が減少。ASEAN諸国が中国に速やかな放流を強く求める事態となった。メコン川下流域の人々には死活問題だ。

2018年、メコン川委員会は持続可能性調査を行い、「2040年までに計画中の11のダムと支流の100以上のダムが完成すれば、生態系、経済、食料安全保障への深刻な影響が生じる」と報告した。

ダムがすべて建設されれば、食糧生産地であるメコンデルタ地域では栄養豊富な土壌の供給が97%減少し、農業に著しい悪影響が出る。ベトナムとカンボジアで「海岸浸食」が進む一方、回遊魚の遡上が寸断されて生態系が損なわれ、メコン川全体の漁獲量が40~80%減少すると予想した。

中国が国外で行うダム建設は、しばしば世界中の新興国に重い債務を負わせ、環境破壊や地域の「水争い」を助長する原因になっている。

<2020年10月13日号「中国ダムは時限爆弾なのか」特集より>

譚璐美(たん・ろみ)/作家
東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション! ――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。
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