初代から受け継ぐ「ハリアーらしさ」とは何か ハリアーブランドを築き上げた2つの要素

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初代は当時の中~大型セダン「カムリ」をベースにして、背の高いボディ(全高1665㎜)と185㎜の最低地上高を組み合わせた。滑らかな曲面を多用したボディデザインは従来の4WDとは一線を画し、まさしくフォーマル。新型もそのセオリーをしっかりと守る。

ヒップポイント(地面からシートに着座するまでの距離)を前席で725㎜、後席で745㎜とした。このヒップポイントは660㎜あたりに設定すると、乗降性に優れるといわれている。そこから65~85㎜高めた初代ハリアーは、小柄な同乗者であっても乗り降りしやすい設計とされ、それでいて多くのユーザーからは従来のセダンにはない見晴らしのよい視界であると評価されていた。

新型では歴代が大切にした視界の広さとともに、TNGAに基づいて設計されたシート、ステアリング、各種ペダルの配置によって、疲れにくいドライビングポジションを得ている。

さらに高められた静粛性

徹底して車内が静かであることもハリアーの魅力。今でこそ上質さをうたうSUVは数多いが、20年以上前は「クロカンモデル」ともいわれるタフで力強さに牽引される4WDモデルが主流だった。よって少々うるさくても、乗り心地が悪くても、「まぁ、この程度なら」と納得させられていたのも事実。

走行時の静さもハリアーの特徴のひとつだ(写真:トヨタ自動車)

ハリアーはここを大きく差別化した。エンジン透過音や走行音などいわゆるノイズの類いを徹底して遮断し、高い会話明瞭度(車内での乗員同士の会話しやすさ)が保たれる車内空間を実現。これをひとつのフォーマルと位置づけた。

新型ハリアーの静粛性は本当に高い。兄弟車であるRAV4から先のノイズ少なくするため、各部に遮音材をふんだんに追加したことの効果は大きい。

初代が目指した「スポーツユーティリティサルーン」とは、これまで存在しなかった新ジャンルの高級乗用車。新型ハリアーでは、この定義を23年もの間、大切に育みながら独自の世界観へと成長させた。このことが、SUV全盛といわれる市場にあっても、ハリアーが指名買いされる本当の理由であると考えている。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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