知ったらびっくり!?公的年金の「3号分割」 「女性と年金」の未来はどうなっていくのか

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第3号被保険者は、1994年度1220万人をピークに2019年度830万人にまで32%も減少しており、2019年財政検証ではこれからも急速に減少していくことが見通されている。次の図では、厚生年金への適用拡大の幅が広ければ、将来の第3号被保険者数が一層減少することを示している。

さらに次の図にみるように、女性の就業行動は、コーホート間で大きく変化してきている。

1963~1967年生まれの女性の年齢階層別就業率はM字型を描いていたのであるが、1978~1982年生まれでは、すでに30代での就業率の落ち込みがみられない。1986年施行の男女雇用機会均等法は、1997年の改正で実効性を持つようになり、継続就業を可能とする制度も充実してきた。

そして今では、個人で厚生年金をもつことの重要性と合理性への理解も進んできている。最近の調査では、18~34歳の未婚者に女性の理想のライフコースを尋ねると、専業主婦コースを理想とする男性は女性よりも少なかったりする。1980年代は逆で、男性のほうが女性よりも専業主婦コースを理想としていた。

第3号はやっと「つなぎ的なもの」になってきた

先の図の「第2次均等法世代」「女性活躍推進法(女活法)世代」のような人たちが、1986年の男女雇用機会均等法施行後すぐに一般的になると考えていたのが、1985年改革に携わっていた人たちであった。時間はかかったが、彼らの想定も現実のものとなり、第3号被保険者は、「つなぎ的なものであり、経過的なもの」となったり、また利用目的が変質していく未来はそう遠くなかったりするのかもしれない。

もちろん、他国と比べて、非正規雇用の女性が圧倒的に多く、今回のコロナ禍でもダメージを受けたのは非正規雇用、つまり多くは女性であったという問題がある。そうした事情があるために、今の労働市場が続くとすれば、厚生年金への適用拡大が進んだとしても、第2次均等法世代、女活法世代という新しい世代にも、従来と同じく女性の低年金問題が起こることになる。労働市場問題と年金問題は混同して論じられがちだが、日本の労働市場の見直しは、若い世代のために今後加速度をつけて行っていく必要がある。

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