知ったらびっくり!?公的年金の「3号分割」 「女性と年金」の未来はどうなっていくのか
いつもおもしろいと思いながら眺めている話は、いまや、専業主婦がいる片働き世帯は少数なのだから、厚生労働省は、共働きなどの世帯類型も考慮するべきであるという話である。たとえば、日本経済新聞は今年7月25日の社説に、「夫婦・子2人を標準と思い込んでいないか」という記事を書いたりしているわけだが、厚労省をはじめ誰もそんなことは思い込んでおらず、勘違いしているのは記者のほうであったりする。
年金額の違いを生むのは賃金水準
年金というのは、厚労省年金局が繰り返し言っているように、「所得代替率や年金月額の違いは世帯類型でなく賃金水準の違いから生じている」。おそらく間違える記者は、この文章の意味がまったく理解できないのであろう。
たとえば、年収600万円の片働き世帯と、年収300万円ずつの共働き世帯という1人当たり賃金が同じ世帯では、同額の保険料を払い、同額の給付額を得る。第3号被保険者がいようが共働きであろうがまったく関係がない。
そして、年金局は、次のような図を示して、「世帯①」から「世帯⑤」までの間に、どのような世帯類型が分布しているかを、しつこいくらいに説明していたりもする。
このグラフは、横軸に世帯内の1人当たり賃金水準をとり、左側の縦軸は年金月額をとった図である。「世帯①」の賃金水準にいる世帯数を100%とすると、共働きの夫婦世帯で両方が正規雇用で就労している人たちは2%、片働き世帯で正規労働で就労は60%とか、「世帯⑤」の賃金水準では共働きの夫婦世帯で両方が正規雇用で就労している人たちは43%、夫婦世帯でも正規雇用と正規雇用以外で就労しているカップルは12%いるとか、なかなか情報豊富な資料を作っている(2019年財政検証関連資料、16ページ)。
記者をはじめとした、情報を伝える側にいる人たちは、制度を知り、資料を理解し、そのうえで国民に向けて報道をするべきなのであるが、先の日本経済新聞の社説はそれとはほど遠いところにいるーー他紙も同じ間違いを繰り返している。
年金というのは、女性が幸せに働ける社会が構築されていくと、1人当たり賃金水準が高くなり、老後に受け取る年金も多くなっていく。詳しくは、『ちょっと気になる社会保障 V3』の「知識補給 年金の負担と給付の構造」を見ておいてもらいたい。とにかく1人当たり賃金水準が高くなれば年金給付は高くなるのであるから、片働きでいるか共働きを選択するかも、家族内での1人当たり賃金水準がどうなるかが重要な判断基準となる。
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