ホンダF1ついに終止符、エンジン縮小の本気度 撤退を機に、電動車開発に経営資源を集中へ

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9月に行われたイタリアGPでは、ホンダがエンジンを供給するアルファタウリが番狂わせで優勝を果たした。それから約1カ月後、ホンダはF1からの撤退を表明した(写真:ホンダ)

ホンダが自動車レースの最高峰「フォーミュラ・ワン(F1)」から、2021年シーズンを最後に撤退する。「社内では参戦を継続すべきという意見もあったが、開発リソースを環境分野に傾けるべきだと判断した」。ホンダの八郷隆弘社長は10月2日の記者会見で、撤退の理由についてそう強調した。

ホンダのF1は、まさに栄光と挫折の歴史だ。1964年に初参戦し、1980~90年代には故アイルトン・セナ選手を筆頭に勝利を重ねて黄金時代を築いた。一方、2008年のリーマンショックをきっかけに一時参戦を取りやめるなど、撤退と参戦を繰り返してきた。

2015年にはかつて黄金時代をともに築いたマクラーレンレーシングチームに、エンジンなどのパワーユニットを供給する形で4度目の参戦。だが、2017年までの3年間でチームは1勝もできず、ホンダはマクラーレンから実質的に見切りをつけられた。

2018年からは下位のスクーデリア・トロ・ロッソ(当時、現スクーデリア・アルファタウリ)を新たなパートナーとして、エンジンを供給。2019年からはルノーに代わって、上位のレッドブル・レーシングにもエンジンの供給を始めた。ホンダ製エンジンの戦闘力は着実に上がり、2019年にレッドブルは3勝をあげた。

今年もレッドブルが8月にイギリスで行われた70周年記念GPで優勝し、9月のイタリアGPではアルファタウリが番狂わせで優勝を果たした。とくにレッドブルは多くのレースで上位に入賞。現在、チームポイント数で2位(第10戦・ロシアグランプリ終了時点)につけており、王者メルセデスを脅かす一番の存在だ。ホンダとレッドブルの協力体制が軌道に乗り、来年以降はチームとして年間チャンピオンへの期待も高まっていただけに、今回の撤退表明がファンに与えるショックは小さくないはずだ。

世界中で環境規制の強化が加速

ホンダがF1に参戦してきた理由の1つが、エンジン開発やレースで得られる技術と経験が市販車の開発にも生かせることだ。エンジニアの育成や社内の士気向上の面でも貢献してきた。加えて、レースに勝てば自社が持つ技術力の証明にもなり、広告宣伝の効果も大きかった。

しかし、世界を見渡せば環境規制の強化が加速しており、エンジン車が縮小していく時代の到来が現実味を帯びつつある。9月にはアメリカ・カリフォルニア州が2035年までに、同州で販売されるすべての新車を、二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロエミッション車」にするよう義務づけると発表したばかりだ。

ホンダも2030年をメドに新車販売の3分の2を電動車にする目標を掲げる。そして今回、企業活動によるCO2排出量を2050年までに実質的にゼロにする目標を新たに設定。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など、電動車開発に経営資源を集中することは時代の必然ともいえる。

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