ホンダF1ついに終止符、エンジン縮小の本気度 撤退を機に、電動車開発に経営資源を集中へ

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縮小

そうした状況下で、F1に年間数百億円とされる開発費や数百人の技術者を投入して、エンジン技術を磨き続ける重要性が薄れてきていたのも事実だ。F1人気もかつてほどの盛り上がりはない。F1の主戦場である欧州でホンダ車の販売は苦戦しており、マーケティングへの貢献も限定的になっていた。

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撤退の理由として、ホンダは新型コロナウイルスの影響を否定する。とはいえ、新型コロナに加えて、過去の拡大路線の後遺症で主力の4輪事業の収益力は低迷が続く。再建に向けて、国内外の工場閉鎖や研究開発体制の再編などを進めている途上であり、F1を抱え続ける余力はもはやないという判断なのだろう。

八郷社長は会見で「再参戦は考えていない」と断言。ホンダは半世紀以上に及んだF1参戦の歴史に終止符を打つことになる。

EV開発で出遅れも

これまでF1開発を担っていた人材は、次世代技術を開発する部署に移す方針だ。市販車についても八郷社長は「エンジン開発の体制は縮小していく」と明言。従来はエンジンと電動車の開発を両にらみで進めていく姿勢だっただけに、一歩踏み込んだ形だ。

9月には、提携するアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)との間で、北米市場向け車両においてエンジンやプラットホームの共通化を検討すると発表。当面の主力であるハイブリッド車向けなどにエンジン開発は必要で、その投資負担を両社で分担しようという狙いだ。

ホンダは10月末から初の量産型EV「Honda e」を国内で発売する(写真:ホンダ)

ホンダは今後、エンジン開発縮小で捻出したリソースをEVなど電動車に振り向け、「環境対応のホンダ」のブランドイメージを構築していく絵を描く。だが、世界の自動車メーカーがそろって電動車に注力する中、ホンダが技術での優位性やブランドの独自性を確保するのは容易ではない。

実際、EV開発では出遅れも指摘される。北米ではホンダがGMにエンジンを供給する一方、ホンダが現地で販売する予定のEV2車種をGMと共同開発する計画だ。ただ、そのEV開発において新型バッテリー技術を持つGMに主導権があるのは明らかで、ホンダが他社の技術に頼らざるをえない現状を如実に表している。

初の量産型EV「Honda e」を10月末から国内で発売するなど、ホンダのEV戦略は緒に就いたばかり。F1撤退で浮いたリソースをうまく活用して出遅れを取り戻し、「環境のホンダ」への道筋をつけられるか。就任6年目に入った八郷社長は近いうちの交代もささやかれる中、その手腕が問われている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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