業績回復の切り札?ウエアラブルに挑むJINS 疲れや眠気を即座に検知、他社との連携も模索
ジェイアイエヌはこれまでも、超軽量の「エア・フレーム」や目の疲れを軽減するパソコン用眼鏡「JINS PC」などのヒット商品を開発してきた。特にJINS PCは、視力がいい人も眼鏡をかけるという新しい需要を生み出し、急成長。前2013年8月期の営業利益は前々期比2.3倍増の62億円と、利益水準では業界2位になった。
しかし、今2014年8月期は失速。営業利益は前期比6割減の25億円に落ち込む見込みだ。原因は、JINS PCの需要が一巡し、それに続くヒット商品を生み出せていないことにある。そうした中、田中社長は昨年から「眼鏡の歴史を変える新しい商品を投入する」と予告していた。それが、今回のジンズ・ミームだ。
田中社長のかける期待は非常に大きい。「B to C(一般消費者向け)だけでなく、B to B(企業向け)としてのポテンシャルも秘めている」。
運転の分野では、自動車部品大手のデンソーや慶応義塾大学との産学連携でジンズ・ミームを用いた次世代運転サポート技術の研究開発を進めている。
また、ジェイアイエヌは開発者向けにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開する予定。ジンズ・ミームのデータを利用したアプリを第三者が開発できるようになり、そこから新たなビジネスが生まれる可能性もある。
越えるべきハードル
では、ジンズ・ミームは売れるのか。カギを握るのは価格だ。ジェイアイエヌは現時点で未定としている。
ちなみに、グーグルグラスは1500ドル(約15万円)、セイコーエプソンが6月下旬に発売する眼鏡型端末「モベリオ」の新型は6万9880円と高額。歩数など活動量を記録するという機能の点で競合となりそうなリストバンド型を見ると、ナイキの「ナイキプラス フューエルバンド エスイー」は1万6200円だ。「JINSが作る商品なので、皆さんの手の届かない価格にはならない」と田中社長は言う。
普及させるためには、データ取得の精度を上げることも必要だ。たとえば、視線移動やまばたきを検知する眼電位センサーは、鼻パッドと眉間の部分に搭載されており、顔の皮脂が多くなると、データが取りにくくなる場合がある。
「誰でも、どこでも、いつでもデータを取れるように、サンプル数を広げていくことが研究課題」(R&D室の井上一鷹マネジャー)。現在は電極の素材などを考えているところだという。
ウエアラブル端末という新しい分野に挑むジェイアイエヌ。来年春の発売に向けて、越えるべきハードルが残っている。
(撮影:尾形文繁)
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