映画「テネット」アメリカでコケた予想外の事情 日本では大ヒットも「興行収入赤字はほぼ決定」

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とは言っても、映画館を開けていいのかどうかの判断や基準はそれぞれの自治体で違うことから、遠くまで行くことをいとわなければ、見ることは可能だ。

全米規模では『TENET テネット』の公開時点で6割近くの映画館が開いていたし、公開後まもなく、ロサンゼルス郡のすぐ南のオレンジ郡でも再開が許された。ニューヨーク州のお隣ニュージャージー州でも開いている。

しかし、ノーランの最新作であり、コロナで映画館が閉まって以来ほぼ半年ぶりの超大作であったにもかかわらず、遠征してまで映画を見る人は、あまりいなかったのである。

そこに、2つめの答えがある。多くの人は、映画館に行くことをまだ不安に感じているのだ。劇場主たちは、この日に備え、数週間前からコロナ対策を徹底し、安全であることを強調してきた。そもそも、営業再開が許されている地区でも、定員の25%、あるいは50%までしか観客を入れることができないため、ソーシャルディスタンスは保てるのである。

だが、やはり定員の25%でロサンゼルスでも営業再開が許されたヘアサロンと違い、映画館は「行かなくてもすむ」ものだ。だから「今映画館に行くのはやめておこう」となる。同作の上映時間が2時間半もあるのも、「そんな長い間、密室にいるのは怖い」と、観客の不安に輪をかけたのかもしれない。

映画業界を悩ます「自治体の対応」

ロサンゼルスは、カリフォルニア州知事が定めた2つの基準の両方を満たせば、今のオレンジ郡と同じ段階に入ることができ、定員の25%で映画館も再開できる。そのうちひとつ、陽性率の基準はとっくに満たしているのだが、もうひとつの1日あたりの平均新規感染者数の基準が満たせない。しかも、両方を3週間連続で満たさないことには、次の段階へ行けないのだ。

一方、甚大なコロナ被害を見事抑え込んだニューヨークは、ボウリング場やジム、レストランの店内での食事も許可したのに、映画館に関しては動く様子がまるでない。

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