ニコン社長交代、これから直面する多くの難問 15年振りに事業部制へ回帰する狙いとは?

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牛田氏にはデジカメ事業の経験がない。その点は問題にならないのだろうか。「新しい視点をもって事業の本質を考える、という点で能力が高い。デジカメの環境が急変している今、経験のあるなしではなく、将来に向けて手を打っていくことができることが大事だ」(木村社長)。

牛田氏も、すでに新しい戦略を温めているようだ。「中国の内陸部など、新興国ではまだまだ売り上げを拡大できる。これまでの(画素数など)スペック競争から脱却し、新しい価値を顧客に提案する。2000年代前半ほどの急成長ではないかもしれないが、売り上げ拡大の余地は十分にある」と、一眼レフの立て直しに自信を見せる。

また、デジカメ事業の立て直しと同時にニコンが進めているのは、健康医療関連など新規事業の育成による事業ポートフォリオの転換だ。これまで会社の成長を支えてきたデジカメ事業、露光装置事業がともに成熟化に直面する中、新規事業を育成して成長のドライバーとするというのがニコンの中期計画となる。新規事業については、ニコンが強みを持つ光学、精密機械の技術を生かしつつ、足りない部分については「M&Aやアライアンスも行っていく」(牛田氏)。

15年ぶりに事業部制に回帰

トップ交代と同時に、全社的な組織変更も行う。その一つが、カンパニー制から事業部制への回帰だ。

1962年に事業部制を採用したニコンは、吉田庄一郎社長時代の1999年10月にカンパニー制へ移行していた。現在、デジカメの映像カンパニー、露光装置の精機カンパニー、顕微鏡などのインストルメンツカンパニーという3社の分権体制だ。しかし、6月27日からは事業部制に戻す。この組織改編により、経営トップがニコン全体の戦略構築を行い、それを事業部ごとに下ろしていく仕組みを整える。

「基礎固めは済んだ。これを節目に今後は経営を攻めに移すため、社長交代を決断した」――。4年間の任期を終える木村現社長は、新社長への期待を込めて「攻め」という言葉を使った。苦境にある主軸のデジカメ事業を立て直し、新規事業を育成することで、再びニコンを成長軌道に導くことができるか。牛田氏は社長に就任する1日目から、数々の難問を解決する能力が試されることになる。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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