日本が「都市のIT化」で世界に遅れた苦い事情 「スマートシティ」が日本で実現しなかった訳

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シェア経済モデルで重要なポイントは、「新・前川レポート」で指摘した「開放的なプラットフォーム」を実現することだ。通信網はブロードバンド化によって、誰でも自由に低コストで利用できるようになり、インターネット革命が起こった。

電力網もスマートグリッド化して広く開放することで、第2のインターネット革命が期待されていた。自動運転システムなどで注目される道路網も、誰でも自由に通行できると思うかもしれない。

しかし、「管理主体が国、都道府県、市町村とバラバラで、実際の運用は警察が行っているため、新しいサービスを提供するハードルが高い」(伊藤氏)というのが実態だ。

スマート社会の実現に積極的な欧州

2009年9月に誕生した民主党政権は、マニフェストに再生可能エネルギーの普及とスマートグリッドの導入を盛り込んでいたが、明確なIT政策のビジョンがなかった。2011年3月の福島原発事故を機に、再生可能エネルギーの全量買い取り制度を導入。

HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を設置したスマートハウスが登場したが、電気使用量を「見える化」しただけ。スマートグリッドの導入は先送りされ、エネルギー利用を効率化する取り組みは進まなかった。

日本のIT戦略が停滞する一方で、欧州ではEU(欧州連合)の新しい中期成長戦略「Europe2020」を2010年に策定した。その骨子は「知的な経済成長」「持続可能な経済成長」「(社会全体を)包括する経済成長」の3つに分け、「デジタル社会」、「気候変動・エネルギー・モビリティ」など7つのテーマごとに戦略実施を進めた。

ドイツ政府も、2011年に策定したハイテク戦略アクションプランで「インダストリー4.0」構想を打ち出す。スマート社会の実現に向けて、IoT、AIの導入の取り組みを始めた。

EUでは、2011年から新たなITプロジェクト「FI-PPP(次世代インターネット官民連携プログラム)」を5カ年計画で着手した。2014年にオープンソースの次世代インターネット「FIWARE(ファイウェア)」第1版をリリース、2016年にFIWARE財団を設立してサポートを開始した。

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