また乗りたかった…30年間で廃止になった路線 思い出の路線は乗れるうちに乗車しておきたい

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JR三江線

2018年春に廃止されたJR西日本の路線。本州にあって100kmを超える長大な路線にもかかわらず廃止対象となったことで話題となった。その1年以上前の2016年秋に訪問。すでに廃止が確定した時期だったので、平日にもかかわらず、かなりの人出だった。

列車本数が極めて少なく、明るい時間帯に全線を走破するのは、早朝の列車を除けば、三次駅を朝9時57分発の列車しかない。広島駅発の芸備線から乗り継ぐこともできるけれど、何らかのアクシデントによる乗り継ぎ失敗は許されないので、万全を期して三次市内に宿を取って前泊した。

乗った列車は幸い2両編成で、数少ないクロスシートの進行方向右の窓側席を確保。江の川に沿って走る車窓を堪能した。石見川本駅では1時間半ほど停車。市内でゆっくりと昼食を摂る時間があり、市内を散策できたのも良い思い出である。時間をかけてのんびりと走ったので、江津到着は14時49分。停車時間を含めれば5時間近い長旅だった。

廃止が記憶に新しい

JR札沼線の北海道医療大学―新十津川間

乗車したのは2011年夏。新十津川駅に発着する列車が1日3往復あった時代だった。編集者が同行した取材旅行で、2日かけて線内を行ったり来たりした。おかげで、晩生内(おそきない)、中小屋、月ヶ岡といったマイナーな駅で途中下車。列車ダイヤをうまく読み取ったので、30分から1時間程度の滞在で次の列車に乗り込みことができ、列車が長時間来ないで途方に暮れるという事態を回避することができた。ほどほどの途中下車で駅周辺を散策したのはむしろ変化にとんだ旅となり大いに楽しめたものである。

2日目に終着駅の新十津川駅で降りた後は、タクシーでJR函館本線の滝川駅へ。石狩川の対岸にあり、あっけなく到着したことに驚いた。たった1回の訪問とはいえ、2日にわたって何回も行ったり来たりしたので、車窓風景は目に焼き付いている。

当初、2020年5月6日が最終運行日だったが、コロナ禍で最終列車の運行予定を何回も見直す羽目となった。全国からファンが押し寄せ「密」となる事態を回避するためで、前夜の発表という異例の決定で4月17日の朝10時に新十津川駅を発車する列車が最終運行となったのは記憶に新しい。

北海道の路線に関しては、年々状況は厳しくなる一方で、まだまだ廃線が増えそうであるし、その他の地域のローカル線も決して予断を許さない。コロナ禍で、鉄道自体の経営は苦しさを増すばかりで、10年後、どれだけの路線が生き残っているか心許ない。せめて、機会を見つけて乗りに行って、ささやかながらも路線と沿線地域の活性化に寄与したい。

以上、今回は筆者の思い出をもとにいくつかの廃線を選んだが、読者の皆さんにも、それぞれ忘れられない路線があることだろう。国内旅行が改めて注目を集める中、もし今でも乗ることができる路線であれば、記憶をたどって再訪してみてはいかがだろうか。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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