「外国人労働者=苦労人」と思う日本人の誤解 異国の自由を謳歌するベトナム人たちの生き様

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ひとしきり「エッグコーヒー」で騒いだチャンさんは、自宅のある西日暮里に帰っていく。

「駅から10分も歩くと、安い物件が多いんです。新宿と違って」

日暮里近辺もアジア系外国人が増加している印象があるけれど、新大久保からはけっこう遠い。それでもここに通う。毎日、西日暮里から大塚に出勤し、仕事終わりに新大久保に来て、それから西日暮里に戻る。山手線を、行ったり来たり。

食事は決まって外食だ。牛丼屋ばかりなのだという。

『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』(辰巳出版)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「学生のときは『すき家』でアルバイトしてて、その頃からよく食べてた。深夜のワンオペはつらかったけど」

ときどきはカフェに集まる仲間たちとクラブに行くこともある。渋谷にはベトナム人に人気の店があるそうなのだ。それと新大久保には、ベトナム人をターゲットにしたカラオケ屋、カラオケを備えたレストランが増えつつある。

「たぶん4、5軒はあるんじゃないかなあ」

とはいえ、スマホをスピーカーとスクリーンにつなぎ、ユーチューブでベトナムの歌のカラオケバージョンを流すという即席のものだ。これが大人気なのだという。

「かわいそうなベトナム人」という偏見

チャンさんの毎日は、けっこう充実しているのだ。「搾取されるかわいそうなベトナム人」というイメージは、彼らにはあてはまらない。

「いまの暮らしで困ることはほとんどない。楽しい」

そう目を輝かせる。誇張ではないように思った。家族と離れているのはちょっと寂しいけれど、フェイスブックで連絡はしてるから、まあ大丈夫。独身で彼女もいない代わりに、友達がたくさんいる……異国での自由を、身体いっぱいで楽しんでいる。新大久保は、彼らのように都内各所で生活しているベトナム人たちの集合場所でもあるのだ。

室橋 裕和 ライター

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むろはし ひろかず / Hirokazu Murohashi

1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年に渡りタイ及び周辺国を取材する。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動。「アジアに生きる日本人」「日本に生きるアジア人」をテーマとしている。主な著書は『ルポ新大久保』(辰巳出版)、『日本の異国』(晶文社)、『おとなの青春旅行』(講談社現代新書)、『バンコクドリーム Gダイアリー編集部青春記』(イーストプレス)、『海外暮らし最強ナビ・アジア編』(辰巳出版)など。

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