「排泄予測デバイス」手がける異色企業の正体 ラクダ型スタートアップとして海外でも展開
責任者に任命された高柳氏は、現地事情に詳しいため、早い段階から、以下のようにアメリカ市場を分析し、会社の方向性を定めた。
① 日本と違い、ユーザーの中高年は在宅介護が主流であること
②介護保険もなく政府補助もほぼないので自己負担が必要。だからこそ必要な商品を客観的に評価できる
③FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を得てClassⅡ医療機器(人の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることから、その適切な管理が必要な医療機器)として販売するには、臨床試験が必要。大学との共同研究にも時間がかかる。そのため一般的なウェルネス機器として販売。
そのうえで、Triple Wはアメリカで主流の流通チャネルとなっているネットをメインの製品販売ルートに設定。高齢者や障がい者をターゲットに販売して売り上げを徐々に伸ばしている。
一方、日本では、ハードウェアのエンジニアの人件費がアメリカに比べて安く、人材も多いため研究開発をメインに行う。また日本では介護施設をターゲットにしてB2Bのビジネス展開し、ユーザーからのフィードバックを商品開発に取り込んでいる。今は出願中も含め20件の特許を持ちながら、デバイスの小型化と差別化を目指しているそうだ。
今後、同社では中国やヨーロッパなど大きな市場機会がある国や地域への進出も検討している。実際に、さまざまな国から声がかかることも多いようだが、人材や社会環境、社会福祉制度の違いもあるため、慎重に選んでいるとのことだ。
世界各地にさまざまな機能の拠点を置く
ラクダ型スタートアップは、リスク分散のため世界各地にさまざまな機能のオフィスを置き、地域特性に適したビジネス展開をしている。Triple Wのように一気に拡大するのではなく、財務状況のバランスを見ながら取捨選択することこそ、長く生き延びる秘訣かもしれない。
そして多様な資金調達も同社の特徴の1つだ。知人からのエンジェル投資に始まり、日本でのプロトタイプ作成、製品化そして現在の成長まで、中西氏は精力的に資金調達を行っている。
同社はシリーズCの資金調達を実施したほか、経済産業省のスタートアップ企業の育成支援プログラム「JーStartup」に採択されるなど、VC(ベンチャーキャピタル)だけではなく、政府の助成金や大企業とのコラボでも資金調達してきた。そして、次のステージでは、戦略的投資家向けのアプローチをし、資金調達する予定だ。
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