菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔
もっとも、私は、こうした安倍政治の裏の顔を、単純な正義感から批判しているわけではない。増税すれば簡単に国境を越えて出て行ってしまう資本を優遇し、国境を越えるほどの余裕がない人々に国家を支える負担を求めるという政策セットは、グローバリズムが作り出した企業優遇競争に直面した国家たちにおける一種の標準セオリーにほかならなかったからだ。
もし当時の日本が全世界的な資本優遇競争に参加を拒否し続けたとすれば、バブル崩壊後のデフレの底がさらに深くなった可能性だって否定できなかったろう。日本経済を空洞化から救うという文脈では、安倍政治の悪代官性もただの庶民いじめではなかった面もあるわけだ。
だが、それは菅が直面するだろうジレンマを予期させるものでもある。安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる。たたき上げ苦労人としての「信頼できそうな人柄」が売りの菅には、劇場型演出によって消費税再引き上げや法人税再引き下げを押し通すだけの腕力はなさそうに思える。
新型コロナ対策の思い切った見直しを
では菅は何をすればよいか。
短期的には、新型ウイルス対策について筋の通った決断をすることである。本年3月から4月にかけての感染第1波を抑え込まないままで経済再開に踏み込んだアメリカの混乱はさておき、日本や欧州主要国ではウイルスの新規感染状況はまさに感染第2波の状況になった。ところが、この第2波におけるウイルスによる死亡状況を見ると、感染者数増とは裏腹に、ほとんどその深刻化を観察できない。
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