「顔見知り」による性犯罪が日本で起きる背景 女性向け法律本「おとめ六法」が支持される理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

難しいのは子どもが被害者で、加害者が親族のとき。お母さんが娘から相談されたのが、夫や息子による加害なら、自分で判断するのは基本的に難しい。まずは娘の訴えに耳を傾けたうえで、地域の『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター』や児童相談所に相談するといいです。また、スクールカウンセラーも相談相手として考えられます」(上谷氏)。

内容に深く立ち入らない

性被害は、相談される周囲の対応も重要だ。「自分が誘ったのでは」「なぜ抵抗しなかったのか」「どうしてそんな場所にいたのか」「殺されていないだけマシ」「平気そうですね」「あなたにスキがあったのでは」「早く忘れたほうがいいですよ」「そんな服装をしているからだ」などと言う、あるいは好奇の眼で見るなど、被害者がさらに心理的・社会的なダメージを受けるセカンド・レイプをしないことが大切だ。

もし自分が被害者から相談されたら、素人では判断が難しいので、「内容に深く立ち入らず、相手をいたわる程度にとどめるほうがいい。『泣き寝入りしたらダメ』と言うなど、絶対に自分の正義を押しつけないことが大切です」と上谷氏は言う。周囲の人にとって大切なのは傾聴することで、判断することではない。

日本では2010年代半ばから、フェミニズム・ムーブメントが起きたことで、性被害に対する意識は変わりつつあるのかもしれない。「#Me Too運動が起き、2017年に強制性交等犯罪の刑の下限が3年から5年に引き上げられ、肛門性交や口腔性交も含む、被害者の性別を問わないなど、性犯罪に関する刑法が110年ぶりに改正されて世の中の流れが変わり始めた」と上谷氏は指摘する。

性被害に対するマスメディアの姿勢も変わってきたと話す上谷氏(撮影:今井康一)

「昔は、性被害は報道に値せずという感じだったのが、今はNHKが『クローズアップ現代+』で性被害を取り上げる、新聞が長期連載するなどマスメディアの姿勢も変わってきました」

結婚している人でも、恋愛中の人も、その気になれないときはある。また、親しい相手や尊敬している人であっても、性的対象とは思えない場合はある。そういうとき、相手には、断る勇気も必要だ。少なくとも顔見知りの場合は、ノーの意思をできるだけはっきり伝えることが必要だ。

少なくとも、顔見知りでその気がない相手に勇気を出して断るためには、環境の変化が必要な場合もある。勤め先の会社や学校、会社などで、人間同士の信頼関係を損なう性犯罪を許さない社会的合意を育てていくことが、もっと必要かもしれない。社会が味方であると安心できれば、人は強くなれるのではいだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事