「顔見知り」による性犯罪が日本で起きる背景 女性向け法律本「おとめ六法」が支持される理由
「ですから、どんなに気持ちが悪くても、口もゆすがずシャワーも浴びず、着ていた洋服も残しておき、病院や警察にできるだけ早く行くことが、立証につながります。妊娠のおそれがある場合は、72時間以内に病院で緊急避妊ピルを出してもらって飲めば、避妊できる可能性が高くなります。性感染が疑われる場合も、病院で検査してもらうことをおすすめします」(上谷氏)。
性暴力は、どのように法律で定められているのだろうか。強制性交等罪は刑法第177条で、「13歳以上の者に対し、暴行、または脅迫を用いて性交、肛門性交、または口腔性交をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も同様とする」と定められている。13歳以上は性的同意年齢とされており、下限が13歳というのは世界の中でも低い。
強制わいせつは刑法第176条で、「13歳以上の者に対し、暴行、または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6カ月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」と定められている。
合意がないまま、なりゆきで
難しいのは、デートDVなどの形で顔見知りから性被害を受けた場合で、「身体にDNAが残っていて性行為の事実が立証できたとしても、合意がなかったという証拠にはなりません。元カレなどの場合は、『ヨリが戻ったのでは?』と思われてしまう場合もあります」と上谷氏。
顔見知り間で性犯罪が起きる背景には、日本における男女間の文化という根深い問題もある。
「本来、合意のない性行為は違法です。恋愛中のカップルでも夫婦でも、カップルの片方が『本当は、今日は嫌だった』という場合はあります。だけど、日本の場合は合意があるかどうか意思表示がないまま、成り行きで性行為に至ることが多い。
女性も、拒絶することで彼氏が機嫌を損ねてフラれたら嫌だとか、この人と別れたら次はないかもしれないと考えるなど、いろいろな不安を抱えている。若い人たちの前で、性的同意の話をすると、『そんな意思表示はできない』という女性は多いです」(上谷氏)
日本では、自分の意思をはっきり伝えなくても察してもらうことをよしとする風潮が強い。女性誌などのメディアも、「最初は断る」ことを恋愛テクニックとして伝え、男性も拒絶はポーズで本当は嫌がっていない、と思わされてきた悪しき文化がある。しかし実際は、「いやよ、いやよ、は本当にいや」なのではないか。
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