「顔見知り」による性犯罪が日本で起きる背景 女性向け法律本「おとめ六法」が支持される理由
カップル間においても、セックスに関するコミュニケーションをきちんと取れていないのかもしれない。
「男性も、合意があったと思っていたのに、彼女が嫌がっていたと後でわかったら傷つきますよね。夫婦の間でも、性行為の際に会話がないという話はよく聞きます。性のあり方が貧しいですね」と上谷氏は言う。「スウェーデンでは、明確に同意がない性行為は犯罪になっています。性交渉がどうあるべきかを日常的に議論するし、同意を取るのが当たり前の社会だそうです」。
繰り返しセクハラが行われる場合は
セクハラの場合も、立証は難しい。「合意がないのに、顔見知りの相手の胸やお尻を触ったり、下着の中に手を入れるのは強制わいせつですが、犯罪とするには証拠が必要です。国が国民を犯罪者と認定するのは非常に重いことなので、立証にはそれなりに高いハードルが課せられています。触られた人が被害を訴えても、相手がそれを否定し、ほかに証拠がなければ認定できません。『セクハラされた』とウソをついている可能性もゼロではないので。しかし目撃者がいれば、その証言は証拠になります。
繰り返しセクハラが行われている場合は、録音する、詳細なメモを残す、信頼できる友人に具体的な内容をメールやラインなどで送るといった証拠で、立証できる場合はあります」と上谷氏は説明する。
セクハラは、相手が先輩や教師、上司、取引先など、権力を持つ人の場合、現場ではノーと言えないことが多い。また、信頼している相手だった場合、「被害者は、『まさかこの人がそんなことをするなんて』という驚きが大きく、フリーズしてしまう。だから、よほど訓練を受けていないと、すぐに『やめてください』と言うなど、適切な対応を取れないのです。
日本の場合、子供の頃から相手に合わせることが重視され、騒がずなだめてその場を収めることが美しいとされがちです。女性も、はっきりモノを言うと『かわいくない』などと陰口をたたかれかねない。そういう環境で育っていて、拒絶の意思表示ができないため、気がついたら逃れられない状況になっていて、あきらめてしまうケースが多い」(上谷氏)という。
「会社員が仕事先でセクハラにあった場合は、会社が、『取引を切ってもいいから』と毅然として対応して欲しいですよね。派遣労働者で職場の人からセクハラされている場合は、派遣元によってはほかの派遣先を紹介してくれる場合もある。
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