「11月3日トランプ圧勝」で始まる米国の大混乱 民主党が選挙後狙う「永遠の政権維持計画」とは

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そこで次の日程として重要になるのは、選挙結果に対する異議申し立てをする最終日の12月8日(火)だ。この時点で決着がついていない場合、大統領は下院、副大統領は上院が決めるプロセスへ移行する。

過去に下院が大統領を決めたことは3回あった。決め方は各州に1票を与え、上位3人の大統領候補者から選ばせるのだが、その際どちらの党が州を代表する1票を持つかは、どちらの党が「その州の下院議員の数で上回るか」で決まる(下院で民主党が過半数を制したとしてもそれは反映しない)。

まさかの「ペロシ下院議長の暫定大統領」も?

仮に、今回の大統領選挙と同時に行われる下院の改選で今の勢力が変わらないとすると、共和党が1票を持つ州は25州だ。一方、民主党が1票を持つ州は24州で、下院議員数が同数なのはペンシルベニア1州である。

この点からもペンシルベニアが鍵を握るのは明らかで、だからこそ民主党はペンシルベニア出身のバイデン氏を選んだわけだが、今回下院に結論が持ち込まれた場合、トランプ大統領は再選されるのだろうか。

実はそうとは限らない。まず1933年の改正で、下院が大統領を決める場合、採決は「改選前の下院」ではなく「改選後の下院」がすることになった。11月3日の下院の選挙で民主党が躍進すると、改選前の構図が崩れ、州の1票で民主党が共和党を逆転する可能性が出る。

では、その下院の改選も訴訟だらけで結果が出ない場合は、どうなるのか。憲法では、その場合でも2021年の1月20日の新政権はスタートする。その時は、なんと下院議長が臨時大統領に就任する。

過去、このパターンは一度もない。だが、あえて可能性を否定しないなら、次の選挙では大統領選がどうなろうと、下院の民主党の優位が変わることは想定されていない。ならば、大統領が決まらない場合は、そのままナンシー・ペロシ氏が暫定大統領になる。

こうなると、アメリカは想定を超えた混乱になるのは必定だ。だからこそ、前回の記事で詳述した「Transition Integrity Project」では、1876年のような妥協策として、事前にトランプ大統領再選と引き換えに、カリフォルニアの分割と、ワシントンDCとプエルトリコの州へ格上げを提案しているのである。

だがこの提案を共和党が飲むとどうなるか。共和党は永遠に上院の優位性を失うだろう。だから共和党は飲まない。それよりは、共和党はトランプ大統領にあえて「負けてもらう」ほうを選択するはずだ。

しかし、民主党の真の狙いは、さらにその先にある。それは、大統領と上下両院を押さえたうえで、最高裁判事の数を今の9人体制から15人へ拡大することである。

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