中古車頼りの地方鉄道「新車」導入は難しいのか 低コストで導入できる統一車両開発が必要だ

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多数の車両を導入して既存の車両を一気に置き換える場合も、中古車は威力を発揮する。東急グループの伊豆急行(静岡県)は、元東急電鉄の8000系を45両導入した。東横線などで使用されていた車両だが、導入にあたってトイレの設置や海側座席のクロスシート化を行い、観光客や長距離客の利用にも対応している。

伊豆急は8000系によって、それまで普通列車に使っていた一般の車両すべてと、観光仕様の「リゾート21」の一部を置き換えた。車種はできるだけ統一されているほうが、メンテナンスなどの面でも都合がいい。8000系は大量に製造された車両で、東急での引退を受けてまとまった数を導入することができた。

地方私鉄の新車導入例

一方、地方私鉄でも新車を導入する事例もある。

一畑電車(島根県)は2016~2018年にかけて、同社で86年ぶりというオリジナルの新造車両7000系を4両導入した。1両編成で運転可能な車両で、費用は1両当たり約2億1000万円。導入に当たっては沿線自治体や国の補助を活用している。車体の設計はJR四国の7000系電車がベースで、走行関連の機器類はJR西日本の225系に準じている。

一畑電車の7000系はオリジナルの新車だ(写真:ニングル/PIXTA)

一畑電車は東急や京王の中古車両も運行している。なぜ、あえて新車を導入したのだろうか。その理由は、1両だけで走れる中古車は探しても入手困難だったからだ。

都市部の私鉄に1両で運行する車両はなく、改造も困難である。1両で運転できれば、日中など利用者の少ないときに輸送効率を改善できる。また、1両で走れる自由度の高さを生かし、旅客ニーズに応じた増結や臨時列車なども可能になった。

静岡鉄道(静岡県)は従来車両の置き換えのため、2015年度末から新型車両のA3000形を導入した。1両当たりの長さが18m・3ドアのステンレス製車両で、編成ごとに異なる7色のカラーリングを施しているのが特徴だ。2両編成12本を導入する計画で、1両あたりのコストは約1億6000万円という。同社は地方私鉄の中でも有力な鉄道会社であり、将来のメンテナンスコストなども考慮してトータルで新車が有利と判断したのであろう。

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