運動する人「ワクチン効きやすい」という新事実 運動選手を対象にした研究でわかったこと

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研究者らは、運動選手の体が日々の負荷やトレーニングでダメージを受け、それによって免疫システムが強化、調整され、予防接種により効果的に反応したのではないかと論じている。

この研究結果は注目すべきものである。ただし、運動の急性効果を分析したものではなく、1度の激しい運動がワクチンへの反応を変えるかどうかも分析していなかった。そこで、2回目の研究が行われ、その結果が7月に「スポーツと運動における医療と科学(Medicine & Science in Sports & Exercise)」誌に発表された。研究者らは前回と同じデータを用いて分析したが、今回は運動選手の免疫反応だけに注目した。

直前の運動は効果があるか

2回目の研究では、予防接種の2時間前以内に接種前最後のトレーニングを実施した選手たちと、予防接種の前日にトレーニングをして当日は行っていない選手たちとの間で、抗体と免疫細胞の数を比較した。もし、強い運動が免疫反応を鈍らせるのだとしたら、最初のグループの選手のほうが、十分な休息をとったグループの選手に比べて、免疫細胞の数が少なくなるはずだ。

しかし、両者のあいだに違いは見られなかった。予防接種がトレーニングの直後であっても1日後であっても、免疫反応は同じだった。直前の激しい運動は、免疫反応を弱めることも、強めることもなかった。

ザールランド大学のセスターによると、この2つの研究結果からわかるのは、優れた健康状態であることはワクチン接種に対する防御力を高めるということで、それは運動の強度には関わりなく、また予防接種前にいつ運動をするかにも関係ないということだ。

2つの研究は有力なトップ選手を調査対象として実施された。一般の人々の大半は当然そのような選手ではない。しかし、セスターによると、趣味として軽く運動しているだけの人でも、運動をしない人たちに比べると、ワクチンの効果はより大きくなる可能性が高いという。他のワクチン、例えば新型コロナウイルスのワクチンでも、優れた健康状態であれば免疫反応は向上するだろうと、セスターと共同研究者は考えている。

(執筆:Gretchen Reynolds、翻訳:東方雅美)
© 2020 The New York Times Company

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