米大統領選「郵便投票」の不正がほぼ不可能な訳 なりすましや二重投票などの懸念は小さい

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9月9日、トランプ米大統領と共和党の一部政治家はこれまで再三、証拠もなく、11月大統領選で郵便投票が急増すれば、大量の不正に結び付くと断言している。写真は4日、ノースカロライナ州ローリーで、郵送用の投票用紙を整理する選挙管理委員会関係者(2020年 ロイター/Jonathan Drake)

[9日 ロイター] - トランプ米大統領と共和党の一部政治家はこれまで再三、証拠もなく、11月大統領選で郵便投票が急増すれば、大量の不正に結び付くと断言している。

しかし専門家の話では、米国では選挙不正は皆無に近いほどまれだ。既に2016年の選挙で有権者4人に約1人が郵便投票もしくは不在者投票をしている。

いかに投票不正はまれか

多くの研究者が焦点を当ててきたのは成り済まし投票だ。こうした可能性への危惧が、複数の州で有権者の本人確認を厳格化する法律を導入する根拠になってきた。

こうした事例を研究するロヨラ大学法科大学院のジャスティン・レビット法律学教授によると、米国の00年から14年の選挙で、投票件数10億件超のうち、成り済ましはわずか31件だった。

コロラド、ハワイ、オレゴン、ユタ、ワシントンの5州は現在、選挙を主に郵便投票で実施するが、不正はほとんど記録されていない。オレゴン州は00年以降、1億通を超える投票用紙を郵送してきたが、不正が立証されたのは12件ほどだ。

<郵便投票の確実性>

多くの州では郵便投票や不在者投票で不正を防止するため、諸策を重ねて講じている。

全米50州と首都ワシントンは有権者が郵便投票する際、宣誓書などへの署名を義務付けている。また一部の州は、生年月日や住所、運転免許証番号といった個人情報の記入も求めている。この署名は登録済みの署名、通常は有権者登録での筆跡と照合される。

全米州議会議員連盟(NCSL)によると、本人だけでなく証人の署名を義務付ける州も8州ある。3州は公証人の署名も求める。最も厳格な規則を導入しているアラバマ州は有権者に、自分の身分証明書の写しと一緒に公証人1人もしくは証人2人の署名を提出するよう命じている。

返信用封筒は通常、投票用紙を精査する担当者とは別の担当者が開封する。政党や選対陣営が指名することが多い立会人は、集計などの開票手続きの監視が認められている。NCSLによると、ノースカロライナ、カンザス、メイン、フロリダの4州を除くすべての州は、政党からの立会人による開票監視を明示的に認めている。

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