原油1バレル=30ドル割れの懸念が再び出てきた 大産油国イラクのOPEC脱退の観測まで浮上

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ここまでの相場下落は、需要低迷が続いていることが改めて弱気に材料視され始めたことが大きい。新型コロナウイルスの感染拡大によって経済活動が停止、人々の移動が止まってしまったことで石油需要は春にかけて激減。アメリカ国内のガソリン需要は4月には日量500万バレル台と、通常の半分近くにまで一気に落ち込んだ。

現在は日量800万バレル台にまで回復しているものの、依然として過去5年平均を10%以上下回る状況が続いている。ジェット燃料に至っては、国際線を中心に利用客の低迷が続くなか、平年の6割程度にとどまっているのが現状だ。

製油所の低稼働率は需要の長期低迷を示唆

また目先の需要動向を把握するには、製油所の稼働率をチェックするのが簡単、確実だが、9月10日に同国のエネルギー省が発表した石油在庫統計によると、稼働率は71.8%と前週から5ポイントの大幅な落ち込みとなっている。

これは先に大型ハリケーン「ローラ」がルイジアナ州を直撃したことによって、メキシコ湾岸の製油所のいくつかが稼働停止を余儀なくされたことが影響している。だが、ハリケーンの上陸前でもすでに80%台前半に低迷していたのだから、やはり需要の低迷は相当なものということができるだろう。

夏のドライブシーズン中は、例年なら94%-95%という高稼働率を維持、フル稼働でガソリンを生産している製油所が、稼働率を大幅に抑えて生産を絞っているというのは、それだけ需要の早期回復には期待していないということなのだろう。

製油所はガソリンスタンドなどの顧客からの注文動向をいち早く知ることが出来るだけに、先行きに対する判断も正確だ。ハリケーンによる閉鎖から施設が再開するのにつれ、稼働率は今後ある程度は上昇してくるとは思われるが、80%台前半で回復が止まるようなら、まだしばらくは需要の回復にも期待できないということになる。

失業保険の上乗せ給付などの景気支援策のいくつかが7月末に前後して失効したことや、米南部を中心に新型コロナウイルスの感染が再び拡大してきたことを受け、8月以降は景気の回復ペースが鈍ってきている。

一方で市場の期待は「景気支援策第4弾」に集まっている。だがこちらの方も与野党協議が難航しており、法案成立が11月3日の大統領選以降に持ち越しとなる可能性も現実味を帯びてきた。この先も景気の回復が遅れるなら、石油需要が改めて落ち込むことがあっても、何ら不思議ではない。

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