原油1バレル=30ドル割れの懸念が再び出てきた 大産油国イラクのOPEC脱退の観測まで浮上
供給面では、OPECプラス(OPECと非OPECの主要産油国で構成)の生産が再び増加してきたことが、この先新たな売りを呼び込む可能性が高そうだ。価格が1バレル=20ドル台まで急落したことで危機感を高めたOPECプラスは、4月9日から12日にかけて開かれた緊急会合で、2018年10月時点の生産量から23%生産を減らすという方針を前提に、日量960万バレルという歴史的な大幅減産で合意した。
6月に開いた実務者レベルの会合である共同市場監視委員会(JMMC)では、7月から予定していた実質190万バレルの減産幅の縮小を、価格が依然として低迷していることもあって見送った。だが、7月のJMMCでは相場が40ドル台まで回復したこともあって、8月からの減産幅の縮小を決定した。この時点ではサウジアラビア側が、8月から生産を増やしても、需要がしっかりと回復によって吸収することが出来るとの見通しを述べるなど、かなり楽観的な見方をしていた。
減産縮小に加え、OPEC内での不協和音も
米エネルギー省が発表している短期見通しによると、7月のOPECの生産量は、サウジが一足先に自国の減産割当を超えた自主的な追加減産を終了させたこともあって、前月から67万バレル増加、8月にはOPECプラス全体の減産幅縮小を受け、さらに96万バレル増加した。7月、8月の2カ月で、163万バレルも生産が増えたことになるわけで、9月以降の世界需給に影響を及ぼすのは必至と見られている。
またOPEC加盟国内に不協和音が聞かれるようになったことも気になる。8月からの減産幅縮小を決定した際、それまで減産を十分に行っていなかったイラクやナイジェリアといった加盟国は、その穴埋めをするためにも8月以降は逆に生産量を経楽ことで一応の合意ができっていた。
だが、実際には生産が減ることはなかったようだ。イラクに至っては、現状で査覧日生産量を減らすことは難しいと、OPECに対して減産の免除を求めており、OPECの対応次第ではイラクがOPECを脱退するのではとの観測も浮上している。このような形でOPEC内の結束が緩めば、生産量がなし崩し的に増えてくることも十分にあり得るのではないか。
需要に再び伸び悩みの兆候が出てきた一方で、OPECプラスの生産がさらに増加するなら、世界需給が一気に緩むことも考えられる。10日の石油在庫統計では、戦略備蓄を除く原油在庫が7週ぶりに積み増しに転じた。7月以降のOPEC増産も、時期的にそろそろアメリカ国内需給に影響してくる。この先在庫が再び積み増し基調を強めてくれば、こちらもまた相場の大きな重石となるのは間違いない。こうした需給両面での弱気の状況に大きな変化が見られないのなら、売り圧力もまた衰えることはないだろう。
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