「別財布」の共働き夫婦が金欠に陥りやすい訳 結構高収入なのに、なぜかお金が逃げていく

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これは、共働きカップルに珍しいことではありません。

共働きでは、住宅ローンや家賃が夫、食費や光熱費は妻などと分担を決めて家計費を出し合うケースが多いので、「決められたお金を出したら、残りのお金はやぶの中」ということになりがちです。夫も妻も、相手が分担している費用以外のお金を何にどう使っているのか、わからない。それぞれの資産も含めて「干渉しない」のが暗黙のルールになっているのです。太田さん夫婦のように、いくらの収入を得ているかさえわからないというケースも少なくありません。

裕実さんは思い切って、広道さんに近況を聞いたそうです。すると、仕事があまり芳しくなく、収入も若干減っていると。広道さんは「いずれ挽回できるからあえて言わなくてもいいと思ったまま、ズルズルと時間が経ってしまった。裕実の仕事が順調そうだったから、見栄もあって言い出しにくかった」と打ち明けたそうです。

広道さんが勤めるのは外資系企業で、給与は成績次第。年次が高い人ほど、また成果主義の給与体系の人ほど、収入の変動が大きい傾向にあります。収入が減っても、稼いでいたときの感覚のまま生活していれば、当然ながら貯蓄はできません。お互いに干渉しない共働きカップルでは、パートナーがそのことに気づかずに貯蓄は増えないまま、となるわけです。

「教育費の分担」でこじれた共働き夫婦

もっと深刻な状況に陥った共働きカップルのケースです。

武井直人さんと江美さん(いずれも仮名)夫婦も共働きで、小学生の子どもが1人います。最近、中学受験に向けて塾に通う回数を増やすことにしました。塾の費用は江美さんが賄っていましたが、「塾代の増える分を出してほしい」と直人さんに持ちかけたところ……その返事は「ノー」。直人さんは「塾代を出すなんて、余裕ないよ」とゼロ回答を突き付けたのです。

実は、直人さんはかなりの「ゲーマー夫」。最近、課金がかさんでいることに江美さんは気づいていましたが、直人さん担当分の住宅ローンやマンションの管理費、駐車場代、光熱費、生命保険料については滞りなく払ってくれていたので、ゲーム代の多さには口を出しませんでした。

しかし、想像以上にゲームに注ぎ込んでいたようなのです。不安になった江美さんが「私立中学に進んだ場合の教育費は出してくれるよね?」と聞くと、「毎月の費用はなんとかする。でも、入学金などのまとまったお金は出せない」と直人さん。

「夏休みと正月休みの家族旅行の費用、海外旅行代も夫が負担してくれた。お金があるものだと思っていたのに……」と江美さんはショックを隠しません。一方、直人さんは、「あれこれ出させておいて、貯蓄なんてできるわけない」と開き直りです。毎月の給与はゲームに使っていたし、ボーナスは家族サービスに消えていた、というわけです。

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