第6に、規制緩和はある程度進むだろう。なぜなら、規制緩和こそが、最大の利益誘導政策だからだ。規制緩和というのは理論的にも現実的にも100%間違っている。
正しい政策は、規制撤廃だ。あるいは、古い経済や産業構造のために作られた規制を、新しい現実にアップデイトする規制のデザイン変更である。規制というのは、社会と産業のバランスをとるためにも、産業を育成するためにも必要な場合がある。だから、規制は撤廃するか新しくデザインしなおすべきで、緩和は、いかなる場合にも正しくない。
日本で「規制緩和という遅れた政治手法」が好まれるワケ
ではなぜ、日本では政治の世界で規制緩和が好まれるのか。それは昭和の業界政策だからである。規制に守られて、社会から攻撃を受けている業界に対しては、ゆっくりとしたスピードで規制緩和を進めることであり、感謝される。スピードを制限していると政治の側が主張できるからだ。
一方で、参入したい側からも必要とされる。緩和をすすめてくれているのだから、そのスピードを少しでも早くしてもらいたいから、政治に対するお願いは永久に続く。したがって、ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって、もっとも無難で、かつ力を維持できる政策なのだ。
第7に、東京と地方ということで言えば、やはり東京優先だ。金融、資本優先の政策がなされるため、地方にとって望ましい政策はとられないわけではないが、優先順位が落ちることになるだろう。
第8に、消費者の利害は、企業の利益よりも優先されることはないだろう。たとえば、go to travelキャンペーンは消費者の需要喚起というよりも、観光関連事業者へのサプライサイド(供給側)的な利益配分政策であり、企業の立場に立った政策が中心となろう。
「携帯電話の料金引き下げ政策」は、スガノミクスの象徴として取り上げられるであろうが、それはむしろ今後は例外となり、基本的には企業主導のGDP拡大政策となるだろう。前述した第4のポイント、消費税増税指向の議論においても、消費者よりも大企業優先であることは明確だった。
まとめると、ポピュリズム、八方美人であったアベノミクスからは雰囲気一変し、企業側に立った古いスタイルの産業政策が中心となろう。それはある種のサプライサイド政策であるが、古いスタイルで現代には合わない可能性がある。
しかし、ポピュリズム脱却は、今の日本経済にとってはもっとも必要なことで、財政破綻が最も重要なリスクである。それゆえ、そのリスクが高まらないという意味では、望ましい面もスガノミクスには期待され、相対的に言えば21世紀に入って、ポピュリズムが蔓延してきた(小泉政権も例外ではなくむしろ典型だった)歴代の政権に比べれば、悪くない経済政策とも言える可能性がある(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論を語るコーナーです)。
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