バイデンのアメリカは経済政策も「左傾化」へ 選挙後は民主党内で急進左派の発言力高まる
2016年大統領選では、予備選で負けたバーニー・サンダース候補を支持する急進左派が「バーニーでなければ民主党に投票せず(Bernie or Bust)」と掲げ、ヒラリー・クリントン候補に反発する動きが党大会でも目立った。同会場にいた急進左派の筆者の友人も、クリントン氏支持者の演説ではヤジを飛ばしていた1人であった。急進左派は、バイデン氏もクリントン氏同様に穏健派であり、「企業寄り」であり、エスタブリッシュメントであると捉え、予備選では敵対視していた。
バイデン氏は上院議員時代、ウォール街が望む金融規制緩和や北米自由貿易協定(NAFTA)を発効させ、婚姻関係を定義する結婚防衛法(DOMA)やイラク戦争など急進左派が非難する政策を支持したという過去がある。だが、2020年民主党全国大会ではバイデン氏に対する反対勢力は目立たたなかった。
議会民主党で最も注目を集めるアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)下院議員が60秒しか話す時間が与えられなかったことに象徴されるように、民主党全国大会では急進左派の声は抑えられていた。とはいえ、前述の筆者の友人をはじめ急進左派も現時点ではバイデン氏を支えており、4年前と比べ、党内はより団結しているように見える。
急進左派がバイデン候補に妥協する3つの理由
その理由としては、①2016年大統領選での敗北の反省、②バイデン氏を左に動かせるとの期待、③セカンドベストで妥協せざるをえないなどの理由が考えられる。以下、説明したい。
1つ目は、2016年大統領選でクリントン氏がトランプ氏に敗北したことの反省が挙げられる。当時、民主党急進左派の票の一部は本選でクリントン氏ではなく緑の党のジル・スタイン候補など第3党に流れ、このことがトランプ候補勝利に少なからず貢献したと見られている。これを教訓に、2020年大統領選ではトランプ大統領の再選を阻止することを最優先として、団結の必要性を痛感しているのだ。
2つ目は、バイデン氏の政策の左傾化だ。21世紀に入って、民主党大統領候補は通常、支持基盤の多くが参加する予備選ではリベラルな政策を打ち出し、本選では勝利のために中道派の支持を確保する必要性から、より穏健な政策に軌道修正してきた。
しかし、2020年のバイデン氏は異なる。2016年大統領選で民主党が本選で分裂した反省からも、党団結を優先した。予備選勝利が確定した後、バイデン氏はサンダース氏と共にお互いの政策を擦り合わせる「バイデン・サンダース統合タスクフォース」を立ち上げた。急進左派のガス抜きの対策との指摘はあったが、バイデン氏は左寄りの政策を自らの政策綱領に多々盛り込んでおり、一部の急進左派はこれを評価している。
3つ目は、急進左派にとっては理想とはかけ離れたセカンドベストであるものの、トランプ政権になるよりは、急進左派の政策実現性の可能性が高まるという期待が挙げられる。トランプ再選を許して急進左派の望みに反する政策が次々と導入されるよりは、左に引っ張ることが可能であろうバイデン政権の方が少なくとも好ましいというロジックだ。
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