大戸屋のメニューがガラリと変わる必然の未来 コロワイドの敵対的買収で経営方針を転換へ

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ただ、その減少傾向には他の飲食チェーンには見られない、ある変わった特徴があるのです。それはこの減少期間、ほぼ一貫して顧客数が減少している一方で客単価は増加しているのです。2015年度以降の約5年半で例外は2017年度の下期に客単価がマイナス0.2%下がったのと、新型コロナで直近の2020年度上期がマイナス1.6%客単価を下げているだけで、それ以外の期では一貫して大戸屋の客単価は増えています。

実はこれは大戸屋が意図的にとってきた戦略の結果です。大戸屋は品質のよい材料を使って、店舗内で素材を加工調理し、家庭の味を提供する食堂として成長してきました。

野菜はすべて産地を訪問し、農薬や肥料など栽培方法の確認を行ったものを使っています。大戸屋のメニューの特徴はそういった野菜が大きくごろごろと切られてたくさん入っていること。それを店内でひと手間かけて提供します。

中でも国内産のいい食材はここ数年値上がりしていて、特に最近は野菜の値上がりが顕著です。その結果として大戸屋のメニューはだんだんと値上げ傾向になってきています。2014年以前はざっくりと600円台が中心だった定食メニューは現在では800~900円台で提供されています。

大戸屋ランチ(720円)の廃止が転換点に

その大戸屋が大きく業績を下げたきっかけが2019年4月のメニュー改定でした。このとき人気メニューだった大戸屋ランチ(税込720円)を廃止して同等の新メニューとして大戸屋おうちごはん(同870円)の提供を始めたのです。これをきっかけにそれまで以上に顧客離れが進み、既存店の顧客数の減少は上期でマイナス6.5%まで落ち込みました。

そこで10月に再度メニュー改定をして大戸屋ランチを復活させたのですがその価格は税込み720円から790円に値上げ。結果として2019年10月は対前年同月比で既存店の客数は11.6%減となり下期を通じてみても7.8%減と大幅な顧客離れが進んだのです。最終的にそれまでなんとか4億~7億円の黒字をキープしてきた営業利益から一転して、この年は約6.5億円の営業赤字決算に転落したのです。

ここで何が起きていたのかを整理します。要するに大戸屋は品質のよい材料をふんだんに使い、それを店内でひと手間かけて提供するという点をずっとぶらさないで続けてきたということです。2018年までは客数が減っても実はそれほど大きく売上高は減ってはいませんでした。これは減った顧客の大半が低い単価のメニューを注文していた顧客だったということです。

次ページ2019年の値上げでも振り落とされずに残った顧客の実像
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