2枚の大窓「湘南顔」、昭和の鉄道車両に大旋風 大手私鉄からローカル線、森林鉄道まで席巻

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スマートな半流線形の湘南顔は電車だけでなく機関車にも採用された。80系電車と同世代で、今も鉄道ファンに人気の高いEF58形電気機関車は半流線形の2枚窓だ。

急行「能登」を牽引するEF58形電気機関車(筆者撮影)

正統派湘南顔といえる電気機関車としては定山渓鉄道(北海道、廃線)のED500形がある。この機関車はのちに長野電鉄に移籍してED5100形となり、同電鉄の看板電車だった湘南顔の2000系とともに鉄道ファンを熱狂させた。同機はその後越後交通(新潟県、廃線)に移籍して1990年代半ばまで現役だった。

日本初の本格的な幹線用ディーゼル機関車のDD50形(筆者撮影)

ディーゼル機関車では1953年に製造されたDD50形が湘南顔である。同機は日本初の幹線用ディーゼル機関車で主に敦賀―米原間で運用され、D51形蒸気機関車に代わって急勾配区間の「柳ケ瀬越え」の任に就いていた。

前面2枚窓のディーゼル機関車としては、ドイツとの技術提携によって1966年に登場したDD54形も挙げられる。初期に製造された1次形は鼻筋の通った2枚窓の前面デザインで、窓下が突き出した「くの字」型の独特のスタイルだが湘南顔ともいえる表情だった。これは西ドイツ(当時)に存在したスタイルの機関車のデザインを踏襲したようである。

車両デザインも変えた「湘南電車」

湘南顔はそのほかにも地方私鉄や森林鉄道の車両などにも数多く採用され枚挙にいとまがないほどだ。このほかの数多くの車両は筆者の撮影・所有する写真で紹介したい。

80系に端を発する湘南顔の定義は、前面2枚窓であることは共通認識であろうが、それ以外は人によってとらえ方が異なる場合もある。読者諸兄からのさまざまなご意見もあろうが、筆者としては昭和に誕生した前面が独立2枚窓の車両を取り上げたので、その点はご承知おき願いたい。

だが、戦後日本の鉄道に「電車時代」到来の大旋風を巻き起こした80系湘南電車が、国内の鉄道車両デザインにも大きな影響を与えたことはまぎれもない事実であろう。

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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