日本の「人質司法」は一体何がどう問題なのか 検察刷新会議で議論されている改革の焦点

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2008年7月に出された最高検の「通知」(撮影:木野龍逸)

刷新会議におけるこれまでの議論では、検察官倫理に関し、諸外国の倫理規定に比べて項目が少なく抽象度が高い、具体性がないなどの批判が出ているが、警察出身の委員はこうした意見に反論している。

しかし、先進国では当たり前の権利である「弁護人の同席」が認められない現実に対し、海外からは「人質司法の一環だ」として強い批判が絶えない。先進国だけではない。前回8月19日の記事(取り調べ「弁護人立ち会い」認めない日本の問題)でも紹介したように、東アジアでは「弁護人の同席」を認めていない国は中国と北朝鮮、そして日本しかない。

──取り調べ時の弁護人の同席について、倫理面からはどう考えればいいのでしょうか。

「弁護人の同席について、日本はアメリカに比べると50年は遅れていると言っていいと思います。弁護士については、日本弁護士連合会が定めた『弁護士職務基本規程』という倫理規定がある。違反すれば懲戒処分もあります。この基本規定の52条、相手側に代理人が付いているときには代理人抜きで会ってはいけないというのは弁護士倫理の基本の『き』です」

「検察官も法曹なので、法曹倫理を定めた基本規定を尊重すべきだと思います。被疑者に弁護人(代理人)が付いているときに、弁護人抜きで話をしてはいけない。これは法律ではなく倫理の問題です。ところが、民事では必ず守られなければいけない法曹倫理が、刑事は別だということになっているのです」

「これまで弁護人の同席については、倫理的アプローチを取ってきませんでした。取り調べ時の録音録画は『記録』であって、被疑者の権利ではありません。でも、弁護人から助言を受けるのは被疑者の権利です。検察官にはこの権利を尊重する倫理的義務がある。少なくとも法曹である検事の取り調べでは、弁護人が同席すべきです」

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