脱炭素で劣勢の日本が注力すべき2つの分野 欧州は大規模ESG投資でコロナ禍から復興へ

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例えば現行の政策を継続する場合でも2050年までに95兆ドル、もし気温上昇を1.5度に抑えるには130兆ドルの投資が必要とされる。「脱炭素化を加速化すれば、コロナ後の経済復興も加速化できるはず」。この流れに従って、すでに欧州を中心に各国は再生エネルギーへの投資を活発化している。だが、日本はこの流れから「周回遅れ」になってしまっているのが現状だ。

「洋上風力発電」と「水素エネルギー」に活路

世界的な潮流にも乗ったうえでの日本の「巻き返し」の可能性はないのだろうか。岡田氏が挙げるのは「洋上風力発電」と「水素エネルギー」という2つの分野だ。

このうち、前者は欧州やアジア各国などが力を入れている分野だ。欧州は2030年までには大規模な火力発電所数十基に相当するエネルギーを産出する計画がある。アジアでも、中国や台湾、韓国などがこぞって高い計画目標を掲げる。

残念ながら日本では現在のところ、具体的な政策目標はない(2020年中にも「洋上風力産業ビジョン」として公表される見通し)。だが、可能性がないわけではない。国土面積が狭い日本だが周りには広大な海がある。

しかも洋上風力発電は1件当たりのプロジェクトが数千億円と巨額だ。「風車だけでも1万~2万の部品を要し、20年間きちんと動かし続ける必要性がある。洋上風力発電は新幹線のように技術立国としてトライすべきテーマだ」(同)。

もう1つは、水素エネルギーだ。世界が2050年の「二酸化炭素排出実質ゼロ」を目指すには再生エネルギーを生産するだけでは達成は難しく、再生可能エネルギーを貯めて有効に使う技術も必要とされる。そこで注目されているのが水素エネルギーだ。すでに欧州は今年6月、コロナ後の復興戦略の目玉として、大規模な「水素戦略」を打ち出した。2030年に再生可能エネルギー由来の水素を年間1000万トンも製造するというものだ。

この分野での日本の2030年の目標は年間わずか30万トン。日本でも燃料電池自動車の開発などに見られるように、水素エネルギー関連については豊富な技術を持つはず。この分野で確固たる地位を築けるのだろうか。

気候変動問題は若い世代にとってはより切実なものだ。動画では北野氏と岡田氏が、この問題をどうやって身近に捉え、切迫感をもって推進をしていくのかなどを議論。この続きはぜひ動画で確認していただきたい。

東洋経済 会社四季報センター
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