温室効果ガス25%削減に挑む--電子部品の村田製作所が次世代エネルギー製品に技術を応用
また、売り上げ構成は移動体通信向けが4割、パソコン向けが2割と情報機器が大半を占める。これらの分野は今後大きな伸びを期待できないことから、「今の製品にとどまっていてはいけない」(技術・事業開発本部の家木英治取締役)と、危機感を募らせる。そこで、成長が見込まれる事業の一つとして、次世代エネルギー分野の深耕に照準を定めた。そしてここでも、創業以来の“独自性”を貫こうとしている。
開発中のリチウムイオン電池セルは、50年以上も研究を重ねてきたセラミックコンデンサーの積層技術を応用している。正極材や負極材などの電極材を10層以上重ねるのが特徴で、コンパクトながら短時間充電や高出力を可能にする。高度な技術が要求されるこの「積層タイプ」リチウムイオン電池を展開しているメーカーは限りなく少なく、自動車メーカーなどが高い関心を示しているようだ(現在普及しているのは電極を巻く「円筒タイプ」)。
開発に着手したのは06年にさかのぼる。電池開発ベンチャーのエナックス社と共同開発を行ってきた。電動バイクや商業店舗で使うハンディターミナルなど、急速充電が必要な製品への搭載を狙う。小型から大型まで3サイズの開発を終えており、今後は村田製作所単独で展開する計画。電動バイクなどに搭載するのは中型サイズ(86×160×5ミリメートル)で、容量は3アンペアと2アンペアの2タイプを用意している。国内メーカーを中心に複数先への供給をにらんでいるが、量産化は早くても10年度中の見通しだ。
さらに、携帯端末用などへの用途が期待されるワイヤレス急速充電システムを開発中。事業提携先のエプソンに対してモジュールとしての出荷を計画しており、ここに積層タイプのリチウムイオン電池を組み込む(出荷時期は未定)。