トヨタが今、「旧車用パーツ」に力を入れる理由 3Dプリンターも活用されるGRヘリテージパーツ
トヨタ2000GTと言えば、デビューは1967年。「日本初のスーパーカー」とも称されるクルマで、世界的オークションでは1億円以上の価格がつく存在である。
今回、その2000GT用に用意されたパーツは、ほとんどがトランスミッション内部、またはファイナルギアに関する部品だ。
エンジンの出力をタイヤへと伝達するこれらの部品がなければクルマは走らないし、かといって市井の業者が簡単に製造できるものではない。作れたとしても、とんでもないコストになるのは明白なだけに、求められていたパーツである。
実は2000GTもスープラも、トヨタが公開しているリストを見ると、今でも意外なほどたくさんのパーツが供給されていることがわかる。それに今回のGRヘリテージパーツを組み合わせれば、当面は多くのクルマが助かるに違いない。
「1円でもいいから利益を出せ」と社長から言われた
「トヨタ車は本当に耐久性が高く、今までは騙し騙しなんとかなっていましたが、それでも2000GTの発売から50年。さすがに、そろそろ足りないものが出てきました」
布垣直昭トヨタ博物館館長のこの言葉、冗談のようでもあるが、たしかにトヨタ車は耐久性が高く、他車より流用できるパーツも多いことから、これまでは何とか走行できるコンディションが維持できていた一面はある。しかし、さすがにそれも限界がきたというところだろう。まさに待望の復刻となる。
そうはいっても2000GTは、そもそも生産台数たった337台にすぎないクルマだ。多くが現存しているとはいえ、パーツは数が出るわけではない。商売というよりは、ほとんど文化事業と言いたくなるが、実はこのGRヘリテージパーツ、決して赤字前提の事業ではないのだ。
担当のGRブランドマネジメント部 事業・モータースポーツ推進室 バリューチェーンG 主幹、纐纈(こうけつ)正樹氏は次のように言う。
「長期的でいい、そして1円でもいいから利益を出せと言われています。赤字では事業は続きませんから。それは(豊田章男)社長からも、厳しく言われていることです」
利益度外視の文化事業は、会社の経営状態が悪くなったとき、真っ先に打ち切りの対象となる。それでは文化は持続できない。そうではなく、しっかりと利益を出せる構造とすることで、文化を持続させる。これはGAZOO Racing Companyが、モータースポーツで掲げている理念と同じである。儲かる必要はないし、儲かる事業でもないだろうが、赤字さえ出さなければ、継続への支障はなくなるのだ。
「ですからパーツは厳選しますし、製法、素材もいろいろと工夫しています」(纐纈氏)
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