「窓開け」NG、ジャカルタ通勤電車のコロナ対策 地下鉄は本数減でも郊外からの電車は平常運行

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駅では抜き打ちで迅速抗体検査が実施されることもあり、たいてい日に数人の感染者が発覚している。つまり、改札時の検温だけでは防ぎきれず、電車に陽性患者が乗車しているのは明らかなのである。

ホーム上に設置された手洗い台(筆者撮影)

それでも車内を介した感染の実例がないというのは、これら健康プロトコールを守れば通勤電車は案外安全であるという証明にもなっている。また駅員、乗務員はマスクだけでなく、フェイスシールドの着用も励行している。

結局のところ、感染場所や要因は職場やイベントでの気の緩み、また低所得の住宅密集地域を中心としたマスク未着用、民家などでの違法な風俗営業など健康プロトコールを守っていないことに尽きる。交通機関でも当局の目の行き届かないアンコットと呼ばれるミニバンタイプの乗り合いバスは、軽自動車にマスクをしない乗客が10人以上が詰め込まれているという状況もある。

客層の違いが利用者数回復に影響

6月上旬以降は「大規模な社会制限」の緩和が進み、MRTの本数もほぼ平常通りに復帰した。オフィスでの就労や飲食店での店内飲食が解禁され(座席数は5割以下に制限)、大規模商業施設も営業を再開、ほぼ平常の世の中に戻り「Withコロナ」の世界に突入した。

しかし、ここで興味深い現象が起きている。普段なら日に100万人前後の利用客数があるKCIは、4~5月は約20万人まで落ち込むこともあったものの、制限解除後の現在では50万人近くにまでに回復している。途中駅から乗車する筆者は、扉にへばりついて乗らなければならないことも増えてきた。

一方、MRTの乗客減は深刻である。4~5月にかけて利用者数は9割以上の減少を記録し、1日の利用者数が3000人を下回ることもあった。制限緩和後も平日の1日利用者数は2万2000人前後で推移しており、平常時の2割程度にとどまっている。

ここにMRTとKCIの客層の違いが如実に現れており、MRTの利用者の多くはオンライン業務に容易に対応できるオフィスワーカーが大半を占めるということ、あるいはウイルスに敏感になりマイカー通勤に戻ってしまったということを意味している。

急遽設置された自転車レーン。平日でも自転車の通行がかなりある(筆者撮影)

また、最近はシンガポールを発端とする自転車ブームがジャカルタにも押し寄せており、5~10kmの移動なら自転車を使うという動きが出てきた。現在は大通りに自転車レーンを急遽設定している。MRT開業を契機として、ようやく公共交通中心の街づくりという意識が芽生えてきた矢先、まさかの事態である。世論的にも財政的にも今後のMRT網拡大に大きな影響を及ぼすのは必至であろう。

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