「窓開け」NG、ジャカルタ通勤電車のコロナ対策 地下鉄は本数減でも郊外からの電車は平常運行
同時に知事は、同月16日からMRT、LRTおよびBRT(トランスジャカルタ)といった州営交通の大幅な運行時間帯と本数の削減、乗車人数制限を行うと前日の夕方に発表した。ロックダウンはしないものの、事実上の市民の外出を制限するかのような動きとも読み取れた。
だが、あまりにも急な告知だったため、翌朝の駅やバス停は通勤客で大混乱となった。翌日からは周知期間として一旦本数を戻し、翌週から再度本数を削減することになった。MRTは段階的に本数を削減し、4月末には終日30分おきの運転、さらに営業駅は13駅中6駅のみとなり非営業の各駅は通過となった。
しかし、ジャカルタに大量流入してくる通勤客をシャットアウトすることはできなかった。というのも、一方のKCIコミューターラインは平常運行を貫いたからである。
KCIは、ジャカルタ州政府が公共交通の運行時間帯を6時~20時に制限したため、一時的にはこの制限に従ったものの、始発間際の混雑悪化を受けてなし崩し的に運転時間を拡大。それどころか混雑緩和のため、通常よりも増発して対応した。これは単に運営母体が国かジャカルタ特別州かという違いのみならず、KCIの各線が西ジャワ州、そしてバンテン州と複数の地方自治体にまたがっていることも影響した。
都心への人の流れを規制できず
ジャカルタの通勤圏は50kmを超えており、世界的にも稀な東京首都圏に次ぐ巨大通勤圏である。ジャカルタ州政府は学校やナイトスポットを含む娯楽施設の閉鎖に続き、4月10日からオフィスでの就労禁止を伴う「大規模な社会制限」を開始した。しかし、名称に反して実際は自粛令にすぎず、結果的に郊外から流入する通勤客をコントロールできなかった。
その後、ようやく西ジャワ州、バンテン州の足並みも揃い、ジャボデタベック圏(ジャカルタ首都圏)全域で同様の「大規模な社会制限」が実施されることになったが、それでも各州境をまたぐ移動は容認せざるをえなかった。オフィス就労禁止といえども除外業種が多岐にわたるうえ、スーパーなど生活関連産業の営業も許可されており、労働者を郊外からジャカルタに送り込まなければ成り立たない。
結局、MRT沿線の一等地に構えるような大手企業や大規模ショッピング施設こそ閉鎖されたものの、中小企業や商店、パサールと呼ばれる伝統市場も開き続けた。郊外から1日5万人以上が電車に乗って、その日を生きるためにジャカルタに流入し続けたのだ。ロックダウンの必要性も叫ばれたが、国は実施を許さなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら