「窓開け」NG、ジャカルタ通勤電車のコロナ対策 地下鉄は本数減でも郊外からの電車は平常運行

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混雑する電車内での感染爆発の恐れもあるなか、沿線各市はせめてKCIコミューターラインの運行停止、ないしは乗車許可証制を要請した。しかし、国はこれをも一蹴した。しまいには、運休中のBRTの代替バスを運輸省が用意し、KCI主要駅から都心へのアクセスを確保した。

かくして、東京で言えば都営地下鉄はほぼ動かず、JRだけが動いているというような、摩訶不思議な状況が生まれたのだ。

ちなみに、8月29日からジャカルタ近郊のデポック市、ボゴール市はそれぞれ20時以降、21時以降の夜間外出を禁止しているが、両市に乗り入れるKCIの電車は22時台まで運行されているなど、まったく協調性が取れていない。

常夏の国の感染対策は?

ただ、幸いなことに電車内での新型コロナウイルス感染は報告されていない。KCIはMRTに追随して、座席は1人おきの着席と1両60人の乗車定員制(後に70人~80人程度に拡大)を採用した。

5月下旬の週末の様子。ステイホーム期間が1カ月経過し、週末には家族連れの利用が激増した。その後、小児、高齢者の利用制限を設定した(筆者撮影)

しかし、着席定員については厳格に守られたものの、定員制はまったく守られなかった。筆者も週に数回はコミューターラインで通勤しているが、朝ラッシュ時の乗車率が100%を下回ることはほぼなかった。もっとも普段が200%を超えるような混雑であることを考えれば、かなり快適な印象ではある。

日本では通勤電車の換気のための窓開けが日常的になったようだが、1年中真夏の暑さのインドネシアで窓を開けるのはご法度である。では、KCIはどのような対策を打ち出しているのか。具体的には以下の通りである。

●混雑時の駅の入場制限
●ホームへのハンドサニタイザーおよび仮設手洗い場の設置
●改札時の検温の実施※
●座席の1人分空け※
●マスク着用の義務※
●車内での会話、携帯電話の通話禁止※
●小児(5歳以下)の終日乗車禁止
●高齢者(60歳以上)の朝夕ラッシュ時の乗車禁止
 ※はMRTでも実施

最大12両編成にもなる電車の各車両の人数をコントロールすることは容易ではない。そこで各電車の混雑率が極力平準化されるよう、ホームに入れる人数を制限しており、始発駅では座席定員が埋まり次第、発車時間前でもドアを閉めている。

そのため、ボゴール方面を中心としたジャカルタ特別州外の主要駅では、朝ラッシュ時には最大1時間待ちにもなる大行列が発生している。前後間隔を均等に取りながら整然と伸びる列はインドネシアらしからぬ光景でもある。いつも乗客のおしゃべりで騒々しかった車内も一転、静かになっている(おしゃべり対策か、車内BGMをかけている列車もある)。

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