韓国の若者が「就職難」でも大企業にこだわる訳 食い繋ぐため望まぬ仕事や苦しいアルバイトも

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日本でも非正規社員から正規社員になることの難しさがよく話題になるが、韓国でのそれはさらにハードルが高い。その確率はOECD加盟国の平均35.7%に対し、韓国は11.1%にとどまり、かなり低いことがわかる。

そうした状況は「労働市場の二重構造化」と指摘され、問題視もされているが、そこにきて脱産業化など、市場構造の変化によりホワイトカラーの仕事そのものが減少している。平たく言えば、大卒者の多くが望む「それなりにいい仕事」の数自体が減っているというわけだ。

韓国の若年層の失業問題に詳しい、梨花女子大学校経済学部のホン・ギソク教授は筆者の取材に対し、次のように話す。

「韓国の青年失業問題はあらゆる要素が絡み合い、原因を特定するのが困難です。人口的要因と景気変動的要因から述べるならば、韓国でベビーブームが起きた1991~1996年生まれの世代が成人し、雇用市場を圧迫していることが挙げられます。

「大卒」というプライドとのミスマッチ

さらに、労働市場の両極化と、高学歴者のインフレが起きている点も考慮しなければなりません。特に韓国は大企業とそのほかの中小企業の賃金格差が非常に大きく、そのうえ大企業の数が全体の数%しかないため、当然ながら大量にあぶれる人が出てきます。また、似たようなスペックばかりのため区別がつかない。それで政府からは、経歴を開示せずに選考する案が出ましたが、そうなるとさらに混乱が生じるでしょう」

また、ホン氏はこうも指摘する。

「多くの韓国の若者は、大卒であることへの自負があります。韓国の貧しい時代を生きた親世代が、そう仕向けたからです。特にソウル地域の大学出身者はプライドが高く『自分にはもっとふさわしい仕事があるはずだ』と仕事をえり好みする傾向があると思います」

一方で、青年労働問題に取り組む市民団体「参与連帯」代表イ・ジョウン氏は「変わる余地はある」と話す。

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「韓国の労働市場の問題の一つが、ミスマッチです。就職に時間がかかるので、食い繋ぐため望まぬ仕事や苦しいアルバイトをする。生活のために夢を諦める人も多い。そこで政府の経済社会労働委員会で、就職活動中の学生が就業するまで1カ月50万ウォンを最大半年間支給する案が決定しました。また文政権発足後、最低賃金が30%上昇。

それにより、アルバイトだけで生計を立てるのも不可能ではなくなりました。Uberに代表される宅配などの特殊雇用者(業務委託と同意)も活性化されていくでしょう。大企業に就職できなければ終わりといった硬直化した視点を脱し、働き方に多様性が出てくると思います」

安宿緑 ライター、編集者

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やす やどろく / yasu yadoroku

東京都生まれ。東京・小平市の朝鮮大学校を卒業後、米国系の大学院を修了。朝鮮青年同盟中央委員退任後に日本のメディアで活動を始める。2010年、北朝鮮の携帯電話画面を世界初報道、扶桑社『週刊SPA! 』で担当した特集が金正男氏に読まれ「面白いね」とコメントされる。朝鮮半島と日本間の政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様と心の動きに主眼を置く。韓国心理学会正会員、米国心理学修士。著書に『実録・北の三叉路』(双葉社)。

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