韓国の若者が「就職難」でも大企業にこだわる訳 食い繋ぐため望まぬ仕事や苦しいアルバイトも
平均的な中小企業の賃金は大企業の6割にも満たないことが明らかになっている(韓国雇用労働部および中小企業研究院調べ)。世代別に見ると、中小企業の場合、30代で平均年収3000万ウォン台にとどまるが、現在、最も年棒が高いことで知られるSK仁川石油化学などのSKグループをはじめ、サムスンなど大企業の場合、1億2000万ウォン前後。その差は約9000万ウォンに達する。
一方で、大学進学率は日本よりも高い。国内の7割の若者が大学に進学しており、2008年以降OECD加盟37カ国で1位を維持している。
その大卒者が、国内にわずか0.1%存在する、年商5兆ウォン以上のいわゆる大企業を目指すが、実際に一流企業への門戸が開かれているのは、ソウルにキャンパスを置く国立のソウル大学校、そして私立である高麗大学校、延世大学校などの上位大学卒業者にほぼ限定される。結果として多くの若者が、学業に費やした労力に見合わない低賃金の職や、無職に甘んじる状況を招いている。
韓国は「世襲階層社会」である
なお文部科学省の学校基本調査によれば、2019年度の日本の大学進学率は、短期大学への進学を合わせて58.1%。現役だけに限定すると、54.8%に留まっている。
また韓国の賃貸制度では、家を借りる際に数十万~数百万円の保証金が必要になる。それが自立を妨げる結果になり、結婚の困難さなどにも繁がっているようだ。
こうした状況に置かれた韓国の若者は、2010年代に入って「恋愛、結婚、出産」の3つを放棄せざるをえない「三放世代」とされていた。しかし昨今ではそこに「就職、マイホーム、夢、人間関係」を加えた「七放世代」とも呼ばれるようになった。
「世襲階層社会」と呼ばれるが、「階層が親の経済力によって固定されやすい」というのも韓国社会の特徴でもある。階層を上がりたい場合、「半地下」で暮らすシムさんのように有資格者、公務員を目指すほかには「これだ」と呼べるようなルートがなかなか存在しない。それでいて、起業も推奨されず、副業も日本ほど浸透しておらず、貧困を打破する手段が限定的なのがさらに問題と思われる。
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