台湾進出「崎陽軒シウマイ弁当」なぜほかほか? 日本とちょっと違う「便當」の食文化と融合

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日本で駅弁を食べるとき、温かいご飯を期待する人がどれだけいるだろうか。最近は「駅ナカ」の発展で温かい弁当を車内に持ち込めるようになったが、日本では「駅弁は冷めているのが普通」との認識が一般的ではないだろうか。

ひるがえって中華圏の人々はどうかというと、基本的に冷めたものは食べない。弁当が冷めているのは「ありえないこと」という反応が多いだろう。

台湾で販売する「昔ながらのシウマイ」には、しょう油さし「ひょうちゃん」の台湾版が入る(写真:崎陽軒)

崎陽軒が台湾で温かいシウマイ弁当を売るのは、この現地の嗜好に合わせたためだ。同社は2018年6月と2019年1月、台湾の催事でシウマイ弁当を販売。その際に冷めたものを好まないという台湾人の食に対する嗜好などをヒアリングし、今回の台湾出店にあたってはご飯とシウマイを温かい状態で提供することにした。

「日本では冷めていてもとくに何とも思われないだろうが、台湾だとなぜ冷たいのかと言われる」(同社)。ただ、もともと「冷めてもおいしい」が売りの1つだけに「買った状態では温かく、冷めてもおいしいという点をPRしていきたい」という。

また、サイズもやや小さい。日本では5つ入るシウマイが3つで、ご飯の量もやや少なめになっている。これも台湾での声を採り入れた結果という。

弁当と「便當」の違い

崎陽軒の台湾進出の背景ともなった台湾の弁当文化。だが、日本と台湾では「温かいか冷めているか」以外にも違いがある。

日本の駅弁の形状を思い出してみよう。中には丼物のように具がご飯の上に載っているものもあるが、王道といえば、やはりご飯とおかずのコーナーが仕切りで隔てられた「幕の内弁当」系だろう。シウマイ弁当もそうした形態を取っている。

台湾の鉄路便當。これで80台湾ドル(約290円)だ(写真:小井関遼太郎)

一方、台湾で売られている「便當」は、薄い箱の底に白飯を敷き詰め、おかずに当たる肉料理をドンと載せる。そして、さらに煮卵や固めの豆腐を煮たもの、炒めた野菜が載る。おかずの肉は、骨つき豚肉を揚げるか煮るかした「排骨」が主流。揚げた鶏肉「鶏排」や、魚の揚げ物「魚排」が使われることもあるが、基本的にはご飯の上におかずが載った丼物的なスタイルだ。

このような内容からなる「便當」は、台湾の鉄道とは切っても切れない存在で、これを総称して「鉄路(鉄道)便當」と呼ぶ。現地在住の日本人は「日本の駅弁とはずいぶん体裁が違ってしまったが、安さも相まって国民の間にしっかり浸透している」と話している。

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