台湾進出「崎陽軒シウマイ弁当」なぜほかほか? 日本とちょっと違う「便當」の食文化と融合

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基本的に副菜の点数やバリエーションはほぼ固定されている鉄路便當だが、人気の高い有名便當も存在する。

台湾で有名な「池上便當」(写真:小井関遼太郎)

最高峰は「池上便當」で、台湾有数のコメの産地である台東県池上郷という村で栽培されたコメが美味しい、ということから有名になったもの。池上産のコメは輸出され、各国に住む華僑の人々に高い人気を誇る。ここの弁当は昔ながらの木箱に入っており、汁気が少ないのが特徴とされる。 

池上便當と並んで有名な「福隆便當」(写真:小井関遼太郎)

「池上便當」と並ぶ有名弁当の双璧は「福隆便當」だろう。福隆は台北からやや南下した新北市にある街。排骨だけでなく中華風サラミが入っているのが決め手とされ、わざわざ台北から電車に乗って買いに行く人もいるほどだという。

こういった、台湾の鉄路便當は多くが80~100台湾ドル程度。一方、台湾版シウマイ弁当は175台湾ドルで、鉄路便當に比べると高い。現地の便當が非常に安いという状況で、今後どのように台湾の「弁当市場」に食い込んでいけるかが、シウマイ弁当が台湾に定着するかどうかのポイントと言えよう。

「横浜の味」台湾に定着するか

崎陽軒によると、台北駅の店舗は「幸先のよい滑り出し」といい、想定を上回る売れ行きを示しているという。現地在住者によると、オープンから約1カ月が経った今も、店頭にはシウマイ弁当などを求める人が列をなす状況のようだ。

日本版を知る人には「ちょっとボリューム不足」とも感じられるようだが、「オリジナル版をより忠実に再現した商品を出そうという意欲は評価すべき。コロナ流行の厳しいさなか、こうした形で日本の味が再現されるのは嬉しいこと」(横浜出身の在台駐在員)と後押しする声も聞こえてくる。

一方、台北在住で観光政策について学ぶ小井関遼太郎さんは、「従来の便當と比べるとシウマイ弁当の価格が高いことをあえて高級路線とみなし、駅頭よりもむしろデパ地下でしっかり売ったほうがインパクトが強かったかもしれない」とユニークな意見を述べている。

世界各国がコロナ禍から立ち直り、観光旅行目的などの海外渡航が正常化するにはまだしばらく時間がかかりそうだ。日本びいきの台湾の人々が「つかの間の日本の雰囲気」を味わえるであろうシウマイ弁当。日本の駅弁文化と中華圏の食文化が融合した「横浜の味」は台湾に根付くだろうか。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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