ショート動画アプリTikTok(ティックトック)のアメリカ事業の売却をめぐり、新たな不確実性が加わった。8月28日、中国商務省と中国科学技術省が「中国が輸出を禁止または制限する技術リスト」の改訂版を公表。改訂前のリストから削除と追加を合わせて23項目を入れ替え、21項目について規制の要件や技術的基準を見直したのだ。
なかでも注目されるのが、リストの「コンピューター・サービス業」のセクションに「データ分析に基づいてパーソナライズ化された情報のレコメンド・サービス技術」と「人工知能による対話型インターフェース技術」が追加されたことだ。後者には音声認識技術、マイクロフォンアレイ技術(訳注:複数のマイクで音の空間的な情報を取得・分析する技術)、音声でデバイスを起動・操作する技術、人間とデバイスのインタラクション(双方向の対話的やりとり)技術などが含まれる。
TikTokを急成長させた中核技術は、親会社の北京字節跳動科技(バイトダンス)が開発した、ユーザーの好みに基づいて情報をレコメンドするアルゴリズムである。同社はそれをTikTokの中国国内版である「抖音(ドゥイン)」やニュースアプリの「今日頭条」など数十本のアプリに実装し、トラフィックの大幅な伸長に成功した。今や国内外の多数のネット企業がバイトダンスのアルゴリズムを模倣している。
マイクロソフトやオラクルなどと交渉中
輸出制限リストに列挙された技術を海外に輸出する場合は、中国技術輸出入管理条例に基づいて省レベルの所管部門に申請し、許可を得なければならない。つまり今回のリスト改訂によって、バイトダンスがTikTokのアメリカ事業を海外企業に売却するためには中国当局の同意が必要になったのだ。これを受けてバイトダンスは8月30日夜、「技術輸出に関する法令を遵守する」というコメントを発表した。
アメリカ政府はTikTokに「安全保障上のリスク」があると指摘しており、ドナルド・トランプ大統領は8月6日、アメリカの司法管轄下でのバイトダンスおよび関連企業との取引を9月20日以降に禁じる大統領令に署名した。さらに8月14日、トランプ大統領はバイトダンスに対してアメリカ事業を90日以内に売却することを命じる大統領令を追加した。
TikTokのアメリカ事業の売却先は、当初から名前が挙がるマイクロソフトのほか、ツイッター、オラクル、ウォルマートなどがバイトダンスと交渉中とされる。また、バイトダンスの投資家であるセコイア・キャピタルやジェネラル・アトランティックもTikTokのグローバル事業の引き継ぎに関心を示している。一方、バイトダンスは大統領令の差し止めを求める訴訟をアメリカで起こしており、先行きは極めて混沌としている。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は8月31日
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